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男子パラレルジャイアント・スラローム(2016年12月19日)
無名の新鋭サラザン初優勝。ヒルシャーは2年連続の1回戦敗退

昨日は、アルタ・バディアでPGS(パラレル・ジャイアント・スラローム)が行なわれました。隣り合ったコースを1対1で滑って先にゴールした方が勝ち。勝ち抜き戦で勝者を決めるというフォーマットです。昨シーズン、初の試みとしてアルタ・バディアで行なわれたPGS。当初は安全性の面などネガティブな見方もありましたが、第1回が予想以上の成功だったため、今季も引き続きカレンダーに載りました。
 

レースは夕方6時にスタート。GSコースの終盤、ほぼ直線の中斜面に約20秒のコースが設定されました。途中にジャンプがふたつ。ひとつ目はなめて飛ぶことも可能ですが、ふたつ目のジャンプは否応なしに飛ばされる設定です。

出場したのは32名。1回戦は、赤・青のコースを変えて2本滑り、2本のタイム差の合計で勝負が決定しますが、2回戦以降決勝まではすべて1回勝負でした。昨年の優勝者チェティル・ヤンスルッド(ノルウェー)によれば、昨年は山に向かって左側の青コースが明らかに有利だったということですが、今回はコースによる有利不利はなかったようです。

競技開始直後、1回戦第1ヒートでスティーヴ・ミジリエに敗れたマルセル・ヒルシャー。2年連続の1回戦負けというまさかの結果となった

1回戦の最初のヒートはマルセル・ヒルシャー(オーストリア)対スティーヴ・ミジリエ(フランス)。前日のジャイアント・スラロームで優勝し、アルタ・バディアGS4連勝を果たしたヒルシャーの勝利を誰もが予想したでしょうが、結果はミジリエの勝ち。1本目で0秒13先行されたヒルシャーが2本目に激しく追い上げましたが、合計で0秒06及ばず、2年連続の1回戦負けという波乱の幕開けでした。

同様にフェリックス・ノイロイター(ドイツ)もジーノ・カヴィエッツェル(スイス)に敗退。こうした意外な展開が、会場を次第に盛り上げていきました。
 

レースはスピーディに進行し、ひとつのヒートが終了するとすぐに次の対戦がスタートするという非常にテレビ的な展開。平日だというのにスタンドを埋め尽くした観衆にとっても、とても楽しめる演出だったと思います。
ベスト4に勝ち上がったのはカルロ・ヤンカ(スイス)、チェティル・ヤンスルッド、ライフ・クリスチャン・ハウゲン(ノルウェー)、そしてシピリアン・サラザン(フランス)。そして決勝はヤンカVS.サラザンの対戦となリ、サラザンが0秒10差でヤンカを下してウィナーに輝きました。パラレルレースはあくまでどちらが先にゴールするかという勝負で、タイムは関係ありませんが、1回戦から決勝までの全ヒート中、もっとも速かったタイムは、3位決定戦でヤンスルッドが記録した19秒14。決勝でのサラザンのタイムはこれに次ぐ19秒15でした。

昨シーズンはアクセル・ルンド・スヴィンダールを決勝で破って優勝したチェティル・ヤンスルッド。今回は3位どまりだったが最速タイムを記録した

あれよあれよという間に勝ち上がり、ついに決勝でもカルロ・ヤンカを破ってしまったシピリアン・サラザン。これをきっかけにどこまでブレイクするか興味深い

シピリアン・サラザンといっても、ほとんどの人は名前も知らなかったことでしょう。会場のMCも「サラゼン」と連呼していたほど、ノーマークの選手でした。

それがあれよあれよという間に勝ち上がり、誰もが驚くワールドカップ初優勝。表彰式でのどう喜んでいいのか戸惑ったような表情が印象的でした。


そんなわけで、レース後の記者会見は、まず自己紹介から始まりました。
「南フランスのギャップという町の出身で22歳。小さい頃からスキーを始め、ジュニアレース、FISレース、ヨーロッパカップと進んで来て、ワールドカップは今日がまだ8レース目(記録を調べたら実は7レース目でしたが)。初めてヨーロッパカップで優勝したのが12月3日で、それから2週間でワールドカップで勝つなんてまったく信じられないことだ」
「もちろん自信なんてまったくなかった。スタートではジャンプをうまく飛ぶこと、リズムの変わり目をスムーズにこなすことだけを考えていた」
レース前には無名だった22歳も、今やワールドカップウィナー。決勝のヒート前、インターネットを通じて行なわれた勝者予想では、75%がサラゼンに投票していましたが、早くもファンの心を掴んだようです。この予想外の勝利が自信となってさらに成長することでしょう。
「PGSは世界選手権やオリンピックにつながる種目ではないので、これで満足することはない。目標はひとつひとつレースでできるだけ速く滑ること」と最後まで謙虚な姿勢を崩しませんでした。


 

ふたりのベテランにはさまれ表彰台の中央に立つシピリアン・サラザン。22歳と若いが、口ひげのせいかおっさん顔(ほめ言葉)

こうして2度目のアルタ・バディアPGSは成功に終わりました。ショーアップされた演出は観客にもわかりやすく、スピーディに進む展開はアルペンレースの新しい形として受け入れられることでしょう。すでにヨーロッパカップには導入されていますが、今後は日本国内でも開催されるようになれば面白いのではないでしょうか。
 

ただ、その一方で感じるのは、従来のアルペン競技の魅力の再確認です。PGSは確かに面白いですが、このイベントを冬の間中、数10レースも行なうというのには無理があるでしょう。やはりダウンヒルにはダウンヒルの、スラロームにはスラロームの面白さがあり、その奥深さこそがアルペン競技本来の魅力です。ひとりひとりスタートし、変化に富んだ地形と複雑なポールセットを攻略し、タイムという見えない敵を相手に100分の1秒でも速くゴールを目指す。そんなアルペンレースだからこそ、ワールドカップが半世紀にも渡って人々を熱狂させた来たのだと、改めて感じさせられた夜でした。

公式リザルト