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コスタリッチvs.ヒルシャーの“片反騒動”
ザグレブのナイトスラロームでヒルシャーはポールをまたいだのか?
(2012年1月23日の記事の再録です)

  昨日(2012年1月22日)キッツビュールのスラローム第7戦で勃発したイヴィッツァ・コスタリッチ(クロアチア)とマルセル・ヒルシャー(オーストリア)をめぐる“片反”騒動ですが、ここで一度問題を整理しておきましょう。まず事実のみ列記すると


●1月5日にザグレブで行なわれた男子スラローム第4戦で優勝したヒルシャーに、実は旗門不通過(いわゆる片反)の反則があったことが、ビデオ検証によって判明(一部の報道ではアデルボーデンでも同様の疑いがあるということです)したとクロアチアスキー連盟が発表。


●選手がポールをまたいだときには、高い確率で(イヴィッツァ・コスタリッチの父、アンテ・コスタリッチの表現では「10人中9人が」)わかること。それにもかかわらずヒルシャーがレースを続けたことはスポーツの精神に反す る行為であるとクロアチア側は非難している


●これに関してクロアチアはFIS(国際スキー連盟)に対して抗議を準備している


●ザグレブの片反については、オーストリアチームも認めている。ただし競技中に選手本人が気がつかないうちにポールをまたいでしまうこともあり、このときの ヒルシャー自身もまたいだという認識がなかった、と反論している。

ザグレブのナイトスラローム。ヒルシャーが優勝しコスタリッチは3位に終わった

  個人的には、これは非常に難しい問題だと思います。まず、片反ですが、ポールをまたいでしまうのは単なる技術的なミスであり、記録上で失格となるだけで、この事自体が責められるべきことではありません。ただ、またいだときにはすぐに競技を中止する義務があり、不通過後にも滑り続けゴールに入ってしまうとペナルティの対象となります。ワールドカップでは罰金(5万円前後?)も設けられているようです。つまり、「またいでしまったけれど、わからないければいいだろう」という不正に対しては、厳しい処分が与えられるということです。
 話はそれますが、片反した選手が、その後やたら速く滑るということがよくあります。どうせ失敗したのだからと開き直ってがむしゃらにアタックするためにタイムが速くなるという例です。多くの場合、がむしゃらすぎてゴールする前にコースアウ トしてしまうのですが、あとから調べると中間タイムが異常に速かったという例がワールドカップでもよく見られます。

 では、はたしてまたいだ時にレーサー自身にその自覚はあるのでしょうか?

「たいていは、わかるけどね。でも、自分でも気が付かずにまたいでいることが、ごくたまーにある」というのは佐々木明選手です。

「この前も、日本チームのタイムレースで自分でも知らないうちにまたいでいた。湯浅が『あきらさん、またいだでしょ?』っていうから『ふざんけんな! ま たいでねえよ』って。でも後でビデオ見たらがっつりまたいでいた(笑)。だから俺はヒルシャーが本当にわからなかったんだとしたら、そういうこともあるよな、って理解できるような気がする」。というのこの件に関するが彼の感想です。

あまりに攻撃的なヒルシャーの滑りが、思いがけない波紋を巻き起こす要因となった

  個人的には、これは非常に難しい問題だと思います。まず、片反ですが、ポールをまたいでしまうのは単なる技術的なミスであり、記録上で失格となるだけで、この事自体が責められるべきことではありません。ただ、またいだときにはすぐに競技を中止する義務があり、不通過後にも滑り続けゴールに入ってしまうとペナルティの対象となります。ワールドカップでは罰金(5万円前後?)も設けられているようです。つまり、「またいでしまったけれど、わからないければいいだろう」という不正に対しては、厳しい処分が与えられるということです。
 話はそれますが、片反した選手が、その後やたら速く滑るということがよくあります。どうせ失敗したのだからと開き直ってがむしゃらにアタックするためにタイムが速くなるという例です。多くの場合、がむしゃらすぎてゴールする前にコースアウ トしてしまうのですが、あとから調べると中間タイムが異常に速かったという例がワールドカップでもよく見られます。

 では、はたしてまたいだ時にレーサー自身にその自覚はあるのでしょうか?

「たいていは、わかるけどね。でも、自分でも気が付かずにまたいでいることが、ごくたまーにある」というのは佐々木明選手です。

「この前も、日本チームのタイムレースで自分でも知らないうちにまたいでいた。湯浅が『あきらさん、またいだでしょ?』っていうから『ふざんけんな! ま たいでねえよ』って。でも後でビデオ見たらがっつりまたいでいた(笑)。だから俺はヒルシャーが本当にわからなかったんだとしたら、そういうこともあるよな、って理解できるような気がする」。というのこの件に関するが彼の感想です。

ヒルシャーに対する不信感を隠そうとしないコスタリッチ

 次にコスタッチの側の主張について考えてみましょう。

改めて昨日の記者会見の様子を振り返ると、コスタリッチ及びクロアチアスキー連盟側は、相当強い怒りと不信感を抱いているようです。すでに半月以上も昔のことをあえて蒸し返すのですから、それなりの覚悟を持っての行動だと思われます。実際、コスタリッチの口調は激しいものでした。ザグレブの片反についてヒルシャーが、またいだ認識がないと発言したことに対して

「深く失望した。そしてその発言が今日のレースの非常に強いモチベーションとなった」と語っています。

 

 またコスタリッチは、ヒルシャー及びオーストリアスキー連盟への抗議を、英仏100年戦争における「アジャンクールの戦い」になぞらえました。戦力的に圧倒的に劣るイギリス軍がフランス軍を打ち破ったという故事に、アルペン最強国オーストリアに立ち向かうクロアチアの姿を投影したということでしょう。いずれにしても、彼、及びクロアチアが並々ならぬ決意で行動に出たということは間違いありません。

 

 では、なぜコスタリッチは、ここまで熱くなっているのでしょうか。それはクロアチアという国、あるいはコスタリッチ家にどのような背景があるかということを考えなくてはなりません。まず第一に、ヒルシャーの“片反事件”がザグレブで起こったということがポイントです。コスタリッチにとってザグレブは生まれ育った街。そこで行なわれるワールドカップに彼らはとりわけ大きな思い入れと誇りを抱いているのです。旧ユーゴスラビアから戦争をしてまで独立を勝ち取ったクロアチア。アルペンスキーに関してはほとんど歴史も実績もなかったクロアチアのスキー。そして、貧しい生活のなかで親子(父アンテ、イヴィッツァ、妹ヤニッツァ)で厳しいトレーニングを積み、世界のトップにたどり着いたコスタリッチ家。そうした長い戦いの末にようやく実現したのが2005年から始まったザグレブでのワールドカップレースなのです(男子は2008年から)。ですから、彼らにとっては、単なる地元開催のレースということにはとどまらず、 自分たちの血と汗で勝ち取った成果であるという意識が強いのでしょう。そういう宝物のようなレースで不正があったということが彼らには許せないわけです。

FISのルールでは、競技終了15分以内に抗議がない場合そのレースの結果は公式記録となります。したがって現時点ではザグレブの優勝者がマルセル・ヒルシャーであることに変更はありません。一方で、不正があったことを明確に証明できる場合は、30日以内に改めて意義を申し立てることができるという規定もあり、今後クロアチアから正式な提訴があった場合、この決定が覆る可能性も否定できません。かりにそうならなくても、騒動がヒルシャーの心理面に何らかの影響を与えることは充分にありえるでしょう。だから、今回の騒動はコスタリッチが総合優勝のタイトル防衛を狙った心理的な戦略だろう、という見方も一部にあるようですが、個人的にはそれはおそらく違うと思います。アンテ・コスタリッチは

「偉大なチャンピオンは、模範的でなければならない。問題はイヴィッツァがザグレブで得たはずのワールドカップ・ポイントが何点だったかということではなく、スポーツの信頼性なのだ」と述べています。

 

 この問題が、今後のワールドカップにどのような影響を与えるのでしょうか。コスタリッチもヒルシャーもワールドカップを代表するトップ選手。人気・実力ともに高く、そして今季のワールドカップのチャンピオンの座を激しく争っています。どのような決着をみるのか、あるいは決着しないのか、非常に気になる ところです。

さらにこのニュースの続報を読む「FISの裁定で一応の決着。事態は沈静化へ」

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