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アトミックデモチームの氷河合宿
Part2 マテリアルテスト編

トップデモンストレーターが評価する

2019/20 アトミックデモモデル

★スキー

【REDSTER S9i】

【REDSTER S9i Pro】

★ブーツ

【REDSTER STI】

基礎スキーのファクトリーチームとしては、有数の層の厚さを誇るアトミックのデモチーム。ベテランから中堅・若手まで各世代に逸材が揃い、全日本スキー技術選手権でも好成績を収めている集団だ。2018/19シーズンには、新たに武田竜が移籍加入。アトミック1年目でいきなり技術選優勝という快挙を果たした。

そんなアトミックデモチームは、2018/19シーズンの開幕直前、オーストリア、セルデンの氷河スキー場に遠征。2019/20モデルのテストを兼ねたトレーニング合宿を行なった。
参加したのは以下の8名のスキーヤーだ。
若月新一(元ナショナルデモンストレーター、アトミックデモチーム・コーチ)
松沢寿(ナショナルデモンストレーター)
石水克友(ナショナルデモンストレーター)
水落亮太(ナショナルデモンストレーター)
須川尚樹(ナショナルデモンストレーター)
武田竜(元ワールドカップ・レーサー、ナショナルデモンストレーター)
青木美和(ナショナルデモンストレーター)
大場優希(SAJデモンストレーター)


合宿の半ば、8人が集まった全体ミーティングにお邪魔し、技術選への抱負とアトミックの来季モデルの印象にを語ってもらった。
技術線に向けたアトミックチームの戦略についてはパート1で紹介したが、このパート2のテーマは、氷河合宿でテストした2019/20モデルのデモ用スキー【REDSTER S9i PRO】と【REDSTER S9i】、それにブーツ【REDSTER WORLD CUP】【REDSTER STI】の特性とフィーリング。メンバーたちがそれぞれの感覚を語り合ったミーティングのすべてをここに再現しよう。

松澤寿のコメント

【REDSTER  S9i】軽くて操作性の高いオールラウンドなデモ用モデル

松澤  今回【REDSTER S9i】【REDSTER S9i Pro】(以下機種名のREDSTERは省略)の2機種のスキーをテストしたわけですが、それぞれのモデルの特徴を比較するなかで、どんなスキーヤーのどんな志向の滑りに向いているかについて話し合っていきたいと思います。


まず【S9i】から見ていくと、トップシートの下に入っているメタルが変わりました。現行モデルつまり2018/19モデルでは、センター部にのみ入っていましたが、これを見て貰えばわかるようにトップからテールまで、チタンレイヤーがずうっと通っています。これは現行モデルの【S9i Pro】や【S9 FIS】と同じようにトップシートの下にチタンレイヤーを採用したということ。重さは皆さんはいたり、持ったりしたときに感じたでしょうが、スキー自体が非常に軽い。アトミックが軽くなって3年くらい経って、もう以前の「重いアトミック」というイメージはなく、むしろ「軽いアトミック」になったと思います。それとサイドウォールも変わっていますね。1年目が白、去年が赤、そして今年は黒になりました。黒はレーシングモデルのブラックのものと同じなんですが、温度変化に強い素材に変わって、従来よりも柔軟性に優れているというふうにプロダクトの方からは聞いています。
そこで、こういう変更点が実際はいたときにどんな印象だったのか、聞いていきたいと思います。

石水  今回のテストは氷河コースの硬い雪で行なったので、日本の雪で滑るとまた違った印象になると思いますが、けっこうバランスの良いスキーだと感じました。きちんと強さがあって、しかもしなやか。弱いスキーだとエッジを立てるとトップが逃げたり、板がバタついたりすることがありますが、このスキーは氷の上でもまったく不安なく滑ることができました。バランスが良く、軽く、さばきやすいスキーと言えると思います。1級以上のレベルなら、とても楽しく乗りこなせるでしよう。

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石水克友

水落  昨シーズンのモデルは、メタル(チタニウム)がセンター部に入っていましたが、来季モデルには、トップからテールまで入っています。普通トップからテールまでメタルが入ると重くなると思われがちですが、実際にはくと軽く感じて、なおかつ安定感が非常にあります。より楽に操作できるようになったという印象です。硬いバーンでもしっかりエッジがグリップしてくれるし、スキーもずらしやすいというか操作性が非常にいいので、オールラウンドに使えるスキーだなと思いました。

須川 第一印象としては、チタンがスキーの全面に入ったことで一本“芯"ができたかなという印象を受けました。そのうえで、軽さ、軽快さも失っておらず、スウィングのしやすさは健在です。また、サーボテックの効果でとらえの良さも大きな特徴ですね。トップがかなり内側に入ってきて勝手に(ターンを)誘導してくれる感覚は変わらずに生きています。従来よりもさらにオールラウンド・万能になったかなという印象がすごく強いですね。これで本当に“何でもできるスキー"として完成したといえるんじゃないかと僕は感じています。

武田竜のコメント

武田 僕は初めてこのタイプのアトミックをはいたわけですけど、確かに軽いです。ものすごく軽さがあって、ただプロパー(正規市販品)と聞くと、何となく弱いとかトップが折れるとか、けっこう使いづらいという印象があるかもしれませんが、実際にはいてみたらトップからしっかりグリップがあってセンターの安定感がしっかりしている。けっこうターンの始まりから終わりまでの安定感はしっかりしていました。クオリティも高いし、(タイプとしては)スキーを加速させるというよりも、スキーを安定させてターンするタイプのスキーと言えると思います。

松澤 気に入っています?

武田 ええ、たいへん気に入っています(笑)。

大場 この【S9i】は軽くて、とても操作性が髙いのが特徴ですね。事前のイメージでは、少し弱いのかなと思っていましたが、19/20モデルは、安定感、安心感が備わっていて、あ、このスキーいいかも!って思えました。何て言うんだろう、喰わずぎらいというか、何となく【S9i Pro】に比べると反応が鈍いというイメージがあったんです。ちょっと反応がワンテンポ遅れるイメ―ジが。でも、今回はいてみて、ちょうど良いタイミングでしっかり反応してくれる感覚があり、新鮮な驚きでした。

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若月新一

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​武田竜

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若月 ありがとうございます。次に日本の雪だとどうだろう、という視点からもコメントをもらいたいと思います。また、オールラウンドという表現がいくつか出てきましたけど、その意味、ターン弧の大きさがオールラウンドなのか、雪質なのか、斜面に対してオールラウンドなのか、その辺をもう少し具体的に聞かせてください。

武田 スピードはそれほど出ないけれど、同じターンを続けられるスキーですね。良い意味でスピードを殺せるといえばいいのかな?  コントロールしやすいスキーです。

青木 軽さは現行モデルのままで強度が増したので、対象スキーヤーの幅が広がりましたね。たとえば【S9iプロ】だと逆に強すぎて、コブの中ではコントロールしきれないというスキーヤーにはピッタリだと思いますよ。適度な強さでなおかつ扱いやすいので、小回りでもコブでもこの1台で対応できます。

松澤 【S9i】のシリーズは、アトミックの中でも主軸のシリーズ。ふだんのレッスンでもみんな使つていると思うけど、バランスとしては過去最高の仕上がりですね。一般的にオールラウンドスキーというと、ショート系のスキーが選ばれる傾向があると思うんです。他社のモデル、あるいは歴代のアトミックのスキーと比べても、バランスの良さは際立っていると思います。やっぱりスキーのトップからテールまでトップシートの下にメタルが1枚入ったことで、強度がこれまでより増したし、思い切り滑っても不安がないんです。アスリートスキーヤーはもちろん、これからいろいろなことにトライしようという人まで幅広く対応していますね。とにかく軽いということが一番の特徴だけど、以前よも安定感が増したことで、とても扱いやすくなりましたね。

若月 デザインについてはどうでしょう。とくに女性から見てどんな印象ですか。

青木 昨日のトレーニングを撮影したビデオを見たときに、ここらへん(トーピースの前の部分)がキラッと光って、きれいだなって思いました。かっこいいですよね。売れると思いますよ(笑)。

若月  黒とシルバーというのがいいですね。

青木 女性からしたら、黒ー色よりもいいですね。

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石水克友

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水落亮太

【REDSTER  S9i Pro】早くとらえて素早く抜ける 最上級の快速スキー

松澤 続いて【S9iプロ】の印象について聞かせてください。これはデモ用の最上級機種です。SLのFISのスキーとラディウスも仕様もほぼ同じ。中に使っている芯材が違うので、若干しなやかさが違いますけどね。サーボテックを搭載することによって、操作性という意味ではデモタイプのこちらの方が長けています。速さを求めるならば【FIS S9】でしょうが。技プラス速さで滑るならば、こちらの【S9iプロ】ということになると思います。
新しい【S9iプロ】が現行モデルと変わった点をあげると、まず重要なのがサイドカットがリファインされました。【S9 FIS】と同様、センターからテールにかけてこれまでもよりも少し太くなっています。これによって小さく深い弧のターンでの操作性向上を図っているわけですね。またサイドウォールですがより高分子の素材を採用したことで、温度変化による影響を軽減しています。寒くて硬くなるとか、春になるとペラペラした感じになることもありません。
もうひとつは、トップシート。去年はザラザラした質感のトップシートでしたが、SLと同じタイプのトップシートに変わりました。従来のトップシートはよく粘る感覚がありましたが、来季モデルのものは粘りよりも反発力を感じます。瞬発力があると言えば伝わるかな。強度が上がってスキーのイメージも変わりましたね。

武田 僕の印象では、とにかくはいた感じ速いスキーですね。とらえも早いし、ターンの抜けも早い。谷回りですごく縦に入ってくるというのが印象的なスキーです。ずらすというより縦にどんどん切っていって加速する感覚があるし、深く回ればきちんとスピードをコントロールできるスキーです。

若月 フレツクスに関しては、どう感じましたか?

武田 フレックスは軟らかいけれど、ねじれは強いと思います。それが加速につながっているという印象があります。対象となるスキーヤーのレベルとしては、谷回りをきちんと作れてスピードを加速させたい、その中でコントロールしたい、あるいは軟らかさよりもハードなものを求めて技術を上げていきたいという人には最適なパートナーとなると思います。

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松澤寿

須川尚樹

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須川尚樹のコメント

須川尚樹

須川 谷回りのときに下に向くのが早いスキーだと感じました。スキーの抜けに関しても、スラロームモデルのように推進力を引き出しやすいですね。だからといって、身体が遅れてしまうようなことはなく、常に自分の足下においておけるスキーだと思います。足下の安定感、エッジグリップの強さも感じます。デモモデルの中でも最上級。使いやすさの中で速さを引き出していけるスキーですね。

水落 18/19モデルもかなり良いスキーでしたが、始動時のとらえは早いけれどそこからたわんでからまっすぐいくような印象がありました。それが19/20モデルでは解消されていて、スピードを出したときも、あるいは、カービングで中回りや小回りターンをしたときも、
しっかりスキーが動いてくれます。オートマチックに動いてくれる感覚で、雪質に左右されずいつでもスキーの走りを引き出してくれます。

石水 僕のフィーリングでは、2018/19モデルは、足裏を使ってターンしている感覚が強かったので、板全体に対して重さを乗せるというより足裏に対して自分の体重をかけていくと、思い通りに動いてくれました。それに対して2019/20モデルでは、乗った分だけスキーが反応してくれます。強く荷重すれば速く、強いリバウンドが得られるし、やさしく乗ってあげればソフトに反応する。乗り手の思い通りにターンを作れるので、滑っていてとても楽しく感じました。

松澤 竜が言っていたように縦に入ってくるという意味では、トップの喰い付きというかバランスも、サーボテックのバランスもさらに良くなっていますね。

若月 みんなの滑りを下で見ている印象では、テールのたわみ方が2019/20モデルの方が良いですね。やさしく抜けるというか、引っかからないというか。自然にたわんでいる感じで、抜けがスムーズです。このへんは新しいサイドカットの効果でしょうね。ターンの導入は18/19モデルも良かったけれど、後半のRは明らかに向上していると思います。


松澤 女子のスキーについてですけど、女子は男性モデルよりも2段階短かいサイズになっています。男性用が165cmだったら女性用は157cm。技術選では、このどちらかのチョイスになるでしょう。従来は女子のスキーは短かくなる分、ねじれもフレックスも強さが出すぎたりして、最初は合わせるのに苦労していたと思うんですが、そのへん、19/20モデルの第一印象はどうでしたか?

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大場優希

青木美和

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大場 そうですね。今までの【S9i Pro】は、スキーがむずかしいという気持ちが先行していましたけれど、今回は1本目の滑りからすでに乗り慣れたスキーのような印象を受けました。このスキーは、トップからテールまで全部を使ってターンする感覚があり、すごく乗りやすかったです。だから雪が硬くても全然苦にならない。
 

松澤 前のように、詰まったりすっぽ抜けたりということはなくなったよね。やっぱり157cmは165cmのスキーより短い分、バランスが取りにくい面があるのは否めないんだけど、そこが解消されたので、検定とか技術選などコンペシーンのなかでも、今までのスキーよりもだいぶ戦いやすいと言えると思います。
 

青木 18/19モデルも良かったんですけど、ターン後半の出口から次の入口まで縦に走ったのでそこのコントロールが少しむずかしかった。それがテールとセンターが変わったので、ターンの出口から入口への調整がしやすくなりましたね。どんな斜度でも、後半から前半のターン弧を思い通りに作れるんです。若月さんんが提案してくれた鋭いターンでも丸みのあるターンでも自在にできる気がします。※こちらを参照


松澤 国内のプロダクト担当者と話をしていると、この157cmのスキーは、あくまで女子のスキーをベースにバランスをとったというんですね。たとえば武田竜とか水落亮太のような滑り手を基準にセッティングしたら、アスリートスキーヤーと言われる人たちでも難しいと思うんですけど、それが女子のバランスをとったことで、だいぶ使いやすくなっています。それでいて弱さをまったく感じさせないところがすごいと思うんですが、女子のスキーのバランスというのが、このスキーに関して重要なキーワードとなるでしょうね。

須川尚樹

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須川尚樹

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水落亮太

【REDSTER  STI】たしかなホールド感で滑り手の意思をダイレクトに伝えるブーツ

松澤 最後にブーツについて印象を聞かせてください。ブーツは【REDSTER WORLD CUP】と【REDSTER STI】を比較しながらテストしたわけですが、とくにデモモデルということで【STI】のフィーリングを中心にお願いします。

青木 新しい【STI】は足入れから違いますね。かかとがブーツの中でしっかり着地して、つま先のラッピングも締まった感じがします。私は22.5cmと足が小さめなので、かかとがしっかり収まらない面もあったんですが、このブーツではそういう頼りなさが解消されています。したがってターンの中でもしっかり足首が使えるようになりました。操作性、フィット性ともに大きく向上していて、“包まれている感”が心強いです。
 

若月 足のボリュームの少ない人にもおすすめということですね。
 

青木 そうですね。


武田 足首のホールド感が強いですね。ここの足首がしっかりと中心となって縦の動きと横の動きがしっかり取れるから、前への動きは少し柔らかくなって、横に強いかな、という印象があります。ですからスキーとマッチングしたときのねじれが強くて、それがスピードにつながっているんだと感じます。一番大事なのは足首で、ここがしっかりホールドされれば、つま先もかかとも全体的にバランス良くなる。
 

若月 ヒンジの位置についてはどうかな。自分のくるぶしの位置と合っている? 
 

武田 足首のスナップはすごく使いやすいと思います。だから雪面の反応もダイレクトに感じることができるし、上からそれを押さえつけることも可能。雪面とのコンタクトが取りやすいブーツですね。

 

松澤 克友には、現行の【ワールドカップ】と【STI】だったら、どういう人にどちらのブーツをお勧めするかということを聞かせてほしい。

 

石水克友のコメント

石水 今現行で売られているこちらの【REDSTER WORLD CUP】は、足自体を傾けたらすぐにエッジグリップを感じることができる。だからどうも足元が安定しない、というスキーヤーにはすごく助けになるブーツではないでしょうか。前後と左右方向には、直角方向の力に対して非常に反応のいいブーツ。したがって比較的ゆるい角度でも、足元が安定した状態でエッジがグリップしてくれるでしょう。

それに対して【STI】は、足裏自体が少し親指側小指側が上がった感覚で足入れされている感覚があります。したがって僕の感覚では倒しやすいブーツだと考えます。グリップ自体は、タイミングとしては少し遅く感じるかもしれませんが、内傾角を出したい人、つまり身体をもっと倒したい人は、こういうブーツを選ぶといいと思います。前後左右の方向性を立体的に使えるイメージがあり、斜めに自分の身体を入れていくと、徐々に内傾角が出てくる。斜め前方向への身体の動きなど360度フレキシブルに使えるブーツになっていると思います。

アトミックデモチームの氷河合宿 Part1 はこちら

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