ナショナルチーム選考基準とワールドカップ出場基準

1月8日、9日にアデルボーデン(スイス)で行なわれるワールドカップ男子GS第5戦、第6戦に日本選手は誰も出場しないことになりました。

出場予定だった加藤聖五がヘルニアによる腰の痛みで、しばらくの間戦線離脱を余儀なくされたからです。

では加藤のかわりに他の選手を出すという選択肢はなかったのか? そ

れは、日本チームを応援するファンならば、当然抱く疑問でしょう。

貴重なワールドカップ出場枠がありながら、それを使わない日本チームの判断は正しいのか? 

FIS(国際スキー連盟)とSAJ(全日本スキー連盟)

それぞれが定めた基準をもとに、考察してみました。


まず、SAJのナショナルチーム(強化指定選手)の選考基準は、こちらを御覧ください。オリジナルは http://www.ski-japan.or.jp/library_cat/game/ にリンクがあります。

(以下添付した参考資料は、転載のさいの記述ミスがないよう、すべてSAJから発表されているオリジナルをスクリーンショットで写したものを使います)

この基準によって選ばれた2020/21シーズンのナショナルチームメンバー(強化指定選手)は以下のとおりです。


昨シーズンまでと比べて、基準が大幅に厳しくなった結果、男女合計で6名というコンパクトな編成となりました。Aランクの安藤麻を除く5名は、いずれもUランク、つまり年齢別の基準で選抜された選手たちです。

湯浅直樹をはじめ、石井智也、大越龍之介や向川桜子ら、日本のトップクラスのベテラン選手が、いずれもナショナルチームに入っていないのは、28歳以上の選手に課せられた「種目別のFISポイントランキングで50位(女子は40位)」というハードルをクリアできなかったことが理由です。


一方、強化のための限られたリソースをどう使うかという視点から、27歳以下の選手にはU(アンダー)カテゴリーとして、年齢別の基準が設けられています。将来的な伸び代を考慮し、比較的ゆるい基準となっていますが、年齢が上がるに連れて基準も厳しくなり、それをクリアできなければどんどんふるい落とされていくシステムになっています。昨シーズンまでの3年間は、年末の全日本選手権で優勝すれば、その時点でナショナルチームに加わることができましたが、今年は全日本の開催時期が3月末に移ったので、その特例もなくなりました。

ただし、今季からは強化指定選手(ナショナルチーム)に準ずる国内強化指定選手という枠が新設されました。ナショナルチームに準ずる位置づけだと思われますが、こちらの選考基準とメンバーは以下のとおりです。





厳密には違いがありますが、国内Aが従来あったウェイティング、国内Bがジュニアにそれぞれ相当する括りとなるのではないでしょうか。

ナショナルチームの選考基準については以上のとおりです。


次にワールドカップの出場するための基準について、FISとSAJ、それぞれに説明していきましょう。



FIS(国際スキー連盟)が定める出場枠(Quota クォータ)を、かいつまんで説明すると、まず、FISのすべての加盟国には「ベーシック・クォータ」(基準枠)として各種目1枠ずつあります。これに、当該種目のWCSL(ワールドカップ・スターティングリスト)で60位内に入っている選手の数に応じて、ナショナル・クォータ(国枠)が追加されます。(WCSL自体もかなり複雑なシステムなので、別の機会に説明したいと思います)


現時点で、日本の女子チームには、GSとスラロームにそれぞれ2枠ずつあります。これはベーシック・クォータの1枠にプラスして、WCSLのGSで56位、スラロームで32位にいる安藤麻がナショナル・クォータを獲得しているからです。ただ、枠はあるものに現状では安藤しかワールドカップに出場していません。もうひとりのメンバーである水谷美穂はまだ18歳になったばかり。ワールドカップは時期尚早で、ヨーロッパのFISレースやヨーロッパカップを経験しながら力をつけていこうという方針のようです。


これに対して男子は、WCSLにランクインしている選手がひとりもいないため、ベーシック・クォータの1枠のみしかありません。それはそれでかなり危機的状況といえるでしょうが、ここでは触れないこととします。

さらに、男子のGSとスラロームには、当該種目のFISポイントランキング150位以内という基準も設けられています。日本選手でFISポイント150位以内に入っているのは、GSでは加藤聖五(60位)石井智也(97位)小山陽平(130位)の3名で、スラロームでは、大越龍之介(71位)小山陽平(78位) 湯浅直樹(85位) 加藤聖五(138位)の4名というのが現状です。ただし、大越はシーズン序盤に膝の前十字靭帯を断裂してしまい戦線離脱。来季以降の復活に賭けます。



こうした現状をふまえ、ワールドカップ出場に関して、SAJはどのように定めているかというと



つまり、国内強化指定選手にも“強化事業参加基準をクリア”という条件付きで、ワールドカップ出場への道は開かれてはいるわけです。。わかりにくい表現ですが、ここでいう強化事業とは強化指定選手としての活動という意味で、要するにナショナルチームへの帯同が許されるわけです。SAJからは公表されていませんが、これまでの経緯から想像すると「ヨーロッパカップ8位以内1回、または15位以内2回」程度が強化事業参加基準だろうと推測されます。これが正しいとすれば、かなり厳しいものといわざるをえず、現時点でこれをクリアした日本選手は、ナショナルチームメンバーを含めて誰もいません。昨シーズンはヨーロッパカップGSで12位を1度記録している石井智也も、今季は今ひとつ調子が上がらず、ヨーロッパカップ28位2回が最高です。したがって、加藤の欠場によって空いた出場枠を石井に回すことは、SAJの定めた基準上できないということになります。たしかに石井は昨シーズンまで全日本選手権のGS3連覇の実力者ですが、ここはきっちり線を引くということでしょう。


また、新型コロナウイルスの感染した小山のかわりに、アルタ・バディアのスラロームに加藤が出たのと同様、今度は加藤のかわりに小山をアデルボーデンのGSに出せばという考えもあるでしょう。しかし、小山はまだコンディションが万全でないうえに、これまでGSのトレーニングはあまりできていません。ここで無理をするよりも、しばらくはスラロームに専念しながら調子を上げていこう、というのがチームの判断です。


現状の危機的状況はひとまず置くとして、アルペンチームは高い目標を掲げています。

皆川賢太郎前競技本部長が進めてきた改革の一つですが、そこに到達しそうにない選手は(表現は適当ではないかもしれませんが)切り捨てられていきます。同じ位の成績ならば、将来を見据えて若い選手を優先するというのが基本的な方針です。それでもなお、世界をめざすのなら、なんとかしてでも這い上がってこい。厳しさが、選手たちに求められているのです。


引き続き、日本選手の奮闘と活躍を期待したいと思います。





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