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スパゲッティとTシャツとボーディ・ミラー

2016/17シーズンのワールドカップは10月22日に開幕します。 そろそろ気分を冬モードに切り替える時期がやってきました。 そんなわけで、軽く興奮状態。 ふと思い立って、スパゲティを4本だけ茹でて こんな画像を作ってみました。 2時間ちょっとで仕上げたにしては、なかなか良い出来だと自画自賛。

個人的には、パスタはBarillaに決めています。 味のことはよくはわかりませんが、 古くはアルベルト・トンバ、21世紀に入ってボーディ・ミラー、

そして現在はミカエラ・シフリンと、歴代のスター選手をスポンサードしているバリラ。 アルペン競技界への多大な貢献に敬意を表して、この20年来愛用しています。

実はこの写真のアイディアはパクリです。 残念ながら私自身に、こんなひらめきはありません。

オリジナルはこちら。 ずいぶん昔、ワールドカップで貰ったボーディ・ミラーのTシャツです。

彼のサインとともに左下にプリントされた日付を見ると、 2004年3月14日、セストリエールとあります。 このシーズンの最終戦の会場がセストリエール(イタリア)。 そのときに行なわれたボーディ・ミラー&バリラのパーティで配られたノベルティです。 それにしても、このアイディアの秀逸さには、強烈な印象を受けました。 人を喰ったとぼけたデザインが、いかにもボーディ・ミラーらしく、 思わずニヤリとしてしまいます。 おそらく、本職のデザイナーの手によるものでしょうけど、ボーディだったらこんな風に考えそうだよな、とドンピシャのデザインです。 大切にとっておこうと、実際には数えるほどしか着ていませんが、 さすがに12年もたっていると、もうクタクタですね。

このシーズン、ボーディ・ミラーはワールドカップ総合4位でした。 でも優勝回数は6回と、総合優勝のヘルマン・マイヤーよりも2回も多く最多勝。

彼の全盛期はすでに始まっていたと言ってよいでしょう。

また、チームと一緒のホテル生活は窮屈だからと、

モーターホームでの転戦を始めたことも大きな話題となりました。 でっかいバスを改造したモーターホームで移動し、専属の料理人を帯同。 バリラのパスタは、ボーディにとってポパイのほうれん草のようなものだったようです。 いずれにしても、従来の規格に収まりきれない彼の生き方とキャラクターが、

ヨーロッパで爆発的な人気を得ていた頃の話です。

さて、そんなボーディですが、先日お知らせしたように

ワールドカップに戻ってくるとかこないとかで、大揉めに揉めています。 2015シーズン終了時に、彼はいったんは現役を去ることを決意。この年の世界選手権スーパーGで足に重傷を負ったことが、引退への引き金になりました。

ただし、この時点では当時使っていたHEADとのマテリアル使用契約が残っていました。

そこでボーディはこの契約の早期打ち切りを要求。 これを受けてHEAD USAは、

「もし2016/17シーズンまでに、ボーディ・ミラーがワールドカップまたは世界選手権に再び出場するなら、HEADのスキー、ブーツ、バインディングを使わなければならない」

ことを条件とし、ボーディの要求を受け入れたという経緯があります。

つまり

「契約はあと2シーズン残っているけれど、君が望むならそれはなかったことにしよう。ただし気が変わって、ワールドカップまたは世界選手権に出るのなら、そのときはこれまで通り、HEADのマテリアルを使ってくれ」ということのようです。

ここで平昌五輪(2018年)への言及がないのは、もともとの契約期間が2016/17シーズン終了時までだったからでしょう。

こうしてワールドカップから去ったボーディですが、昨年の冬のはじめにはBomber (ボンバー) http://bomberski.com/ との契約を発表。ちょっとした話題となりました。 聞き慣れないブランド名にファンは戸惑いを感じましたが、さらに驚くことに、一部の報道によれば、彼は単なるテストパイロットではなく、ニューヨークのフィフス・アベニューに本拠を置く高級ブランド、ボンバーの共同経営者でもあったのです。

そして今回、ボーディ・ミラーはシーズンの開幕を約1カ月後に控えた9月半ば、2016/17シーズンの現役復帰をめざしていると表明。ヘッドとの合意の無効を裁判所に訴え、ボンバーでのワールドカップ参戦を明らかにしたのです。 一方、かつてのエースから突如裁判を起こされたHEADは、9月20日付けで、次のような声明を発表しました。

「HEADはボディ・ミラーから訴訟を起こされています。この訴訟では、

2015年にボディ・ミラーが HEADと結んだ宣伝広告契約の終了に伴う義務について、

ボディ・ミラーが異議を唱えています。

ボディ・ミラーはHEADに対し、

最終的にはスキーレーシングから引退する意向であるものの、

個人的利益のために別のスキーメーカーと宣伝広告契約を結ぶことができるよう、

契約を1年早く終了したい旨を申し入れました。


HEADは、スキーレーシングを辞めるという彼の明確な意思に基づき、

かつ、万一気が変わった場合は、2016/17シーズンが終わるまで、

HEADのスキー、ブーツ、ビィンディング以外の用具で

ワールドカップや世界選手権に出場しないことに彼が同意することを条件に、

ボディの契約を解除することで彼のマネージャーと合意しました。

ボディ・ミラーは終了合意で定められた通り、これに同意しました。


しかし先頃、契約終了の合意条件にもかかわらず、

ボディ・ミラーはこの合意を破る意向を表明しました。

HEADは契約上の約束をボディに守らせることを目指す考えであり、

合意で義務付けられている通り、

HEADのスキーを履いて今シーズンのスキー競技に出場する限りは、

ボディを全面的にバックアップします。

HEADの会長兼CEOであるヨハン・エリアシュはこう述べています。

「ボディには約束を守る意思がないこと、

約束を守らせるための我々の合意を彼が破るつもりであることを知り、

心底がっかりしています。

ボディに対しては、我々の権利を強制するためにあらゆる措置をとるつもりです。

とはいえ、 ワールドカップ・レーシングへのボディの復帰をHEADは歓迎します。

ただし、その際にはHEADの 用具でなければなりません」 HEADチームのディレクター、ライナー・ザルツゲーバーはこう付け加えています。

「もちろん、ボディが再びレースに出場する姿を見たいですよ。しかしそれにはHEADの用具を使わないと」


ヨハン・エリアシュ (日本語翻訳はHEAD JAPANによる)


一般的に考えて、こうした文脈の中では、ボーディの要求はかなり強引で、いわゆる無理筋のような気がします。 ただし、彼が裁判を起こしたカリフォルニア州(現在家族とともに住んでいる)のBusiness and Professions Code(事業と職業に関する規定)では、この種の契約を結ぶこと自体を禁じている、という解釈がボーディと彼の弁護団が裁判に訴えた根拠のようです。つまりもともと違法な契約を結んだのだから、破棄することも可能、という主張です。 こうした訴訟に何らかの決着がつくまで、どれくらいの日数がかかるのかわかりませんが、HEADが声明を出した9月21日以来、この件に関する報道は途絶えているので、その先行きは不透明。 いずれにしてもワールドカップの開幕はもうすぐそこに迫っています。

ボンバーの本社住所を調べてみると、トランプタワー、ニューヨーク近代美術館、ロックフェラーセンターまでそれぞれ数ブロックという、まさにニューヨークのどまんなか。一般的なスキーのイメージとはかなりかけ離れたブランドのようです。 アメリカおよびカナダのオフィシャルサプライヤーにはなってはいます。イタリアの工房で熟達の職人によって作られるということですが、わずかな開発期間で、果たしてワールドカップレベルで戦えるスキーが出来上がるのでしょうか。

WEBカタログを見るとレーシングモデルにはGS、SG、DH用の3機種があり、価格はいずれも1,600ドル(バインディングは別)。

奇妙なことにジュニア用を除けば、この3機種が全ラインナップ中でもっとも安い価格設定になっています。

ほとんどが2,000ドル超で、もっとも高価なモデルには4,750ドルという値札がついています。

個人的には、彼のレース復帰はとても嬉しいことです。ワールドカップにとっても、1年のブランクの後、ふたたびスーパースターが本当に戻ってくるとしたら、それは歓迎すべきことのはず。 しかし、今回の件に限っては、ボーディ・ミラーもちょっと迷走しているな、というのが個人的な印象です。周囲と悶着を起こすことはこれまでにもしばしばありましたし、彼のフリーでハッピーな生き方からすれば、それらは必然的に生まれる軋轢だったといえるでしょう。でも今回の騒動は方向性が違うように思えてなりません。

12年前にもらったボーディ・ミラーのTシャツ。 背中側には彼が好きなスパゲッティのレシピがプリントされています。 バジルはないけど、トマトとにんにくとBarillaはたっぷりあるので、 明日の昼間に作ってみようと思います。

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