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負傷者続出のガルミッシュDH

ウェンゲンのラウバーホルン大会、キッツビュールのハーネンカム大会に続き、今週はガルミッシュ・パルテンキルヘンで第64回カンダハー大会。いずれもワールドカップが始まるはるか以前から行われていたクラシックレースです。 1月27日(金曜)は男子ダウンヒル第4戦、ウェンゲンで中止となった分の代替レースとして開催されました。世界一危険だと言われるキッツビュールのハーネンカム・ダウンヒルは、今季は大きなアクシデントなく終わりましたが、この日は一転して荒れ模様。激しいクラッシュが続出しました。


ヴァル・ガルディナでのダウンヒル第2戦。スティーヴン・ナイマンはこのレースで3位

まず11番スタートのスティーヴン・ナイマンが終盤の大ジャンプでバランスを失い後傾姿勢で着地。直後に転倒しそのままネットに突っ込み起き上がることができませんでした。ヘリコプターで病院に運ばれましたが、FISレースディレクター、マルクス・ヴァルドナーの談話によると、膝の前十字靭帯断裂の可能性があるということです。 またキッツビュールで2位となったヴァランタン・ジロー・モアンヌ(フランス)も雪面にエッジをとられて転倒。両足骨折の疑いがあります。おそらくふたりともサン・モリッツ世界選手権への道は絶たれたのではないでしょうか。


おそらく今季絶望の怪我を負ったヴァランタン・ジロー・モアンヌ。写真はキッツビュールのダウンヒル

この日は、出場した55選手中11人が途中棄権。過去にはウルリケ・マイヤーの死亡事故も起きているガルミッシュは、けっしてやさしいダウンヒルコースではありません。ただそれにしても5人に1人が途中棄権という割合は、ダウンヒルとしてはかなり高いと言ってよいでしょう。担架が4回、ヘリコプターが1回というレスキューの出動回数が、改めてこの競技の熾烈さを物語っています。 本来、金曜日はトレーニングランを行なう予定でしたが、ウェンゲンの代替レースが組み込まれた関係でスケジュールを圧迫。また、火曜夜にシュラドミングのナイトスラロームが行われたため、FISのジュリー団の移動を考えれば、トレーニングラン木曜日の1回のみで本番レースを迎えざるをえない状況でした。これについてヴァルドナーは 「トレーニングランの回数は大きな問題ではない。むしろキッツビュールでの1週間で、選手たちがいろいろな意味で疲れており、集中力が落ちていたのではないか」と語っています。 連日の好天でコース状況はよく、レース運営にも問題はなかったとヴァルドナー。ただ状況が良すぎたせいか、レーススピードが上がり、ただでさえ難しいこのカンダハーコースがさらに難易度を増していたことは確かです。

優勝したトラヴィス・ギャノン  Photo:Gio Auletta/Pentaphoto

さて、レースの方は優勝がトラヴィス・ギャノン(アメリカ)、2位チェティル・ヤンスルッド(ノルウェー)、3位ペーター・フィル(イタリア)の順。キッツビュール優勝のドミニク・パリス(イタリア)は10位と振るいませんでした。

ギャノンはキッツビュール29位という敗退レースの後、見事に立て直して自身2度目のワールドカップ優勝を果たしました。アメリカ選手がカンダハーコースでのダウンヒルで優勝するのは史上初めて。ガルミッシュでの優勝も1982年にGSで優勝したスティーヴ・メイヤー以来の快挙です。 「両親やガールフレンドがゴールで見ていたし、近くにある米軍基地から多くのアメリカ人が応援に来てくれていたので、優勝はとても嬉しい」と喜びを語る一方 「トレーニングランのときよりもかなりスピードが上っていて、とてもむずかしいレースだった。日曜日にはジャイアント・スラロームが行われるので、コース後半はインジェクション(コースに刺したパイプから大量の水を注入してアイスバーンを作る方法)で固められていたが、前半は雪の状態が一定ではなかった。またターンの途中にジャンプが設けられていた部分はとても難しかった。スキーをたわませた状態で空中に飛び出さなければならなかったからだ」と疑問を投げかけています。 実際トレーニングランでの彼のタイムは1分57秒42。それがレースでは1分53秒71と4秒近くも短縮されています。平均スピードで比べると101.18km/hと104.48km/hですが、体感的にはその数字以上の速度差を感じていたのではないでしょうか。

激戦の男子ダウンヒル。表彰台の顔ぶれはレースごとに入れ替わっている   Photo:Gio Auletta/Pentaphoto

 “ガルミッシュ・スペシャリスト”の異名を持ち、このコースを大の得意としているエリック・ゲイ(カナダ)もジャンプの離陸に失敗し、背中から叩きつけられるという大クラッシュ。幸いにも怪我はありませんでしたが、スティーヴン・ナイマンと同様、スピードにはめっぽう強く、とくにジャンプでの果敢さとうまさには定評のあるゲイだけに見るものには衝撃的なシーンでした。 明日は本来のカンダハー・ダウンヒル。観客も増え、会場はさらにヒートアップすることでしょう。そんな高揚した雰囲気に選手たちが燃えることは間違いありません。エキサイティングなダウンヒルが見られるはずですが、白熱したレースを期待する一方でこれ位以上負傷者が出ないことを祈ります。

(現地取材協力:内田雪)


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