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前田俊二さんのこと

October 27, 2017

10月25日、ヨーロッパ上陸初日の夜は、ミュンヘンからスタートして午前2時過ぎにインスブルックに到着しました。私がまだスキージャーナルの編集者だった頃、いつもいっしょに組んで仕事をしていたカメラマン、前田俊二さんが定宿にしていたホテルに泊まりました。町の中心からは少し外れた住宅街にある「ビンダース」という小さなホテルです。
「古くてボロくて、だけど居心地いんだよ」と、彼ひとりでこの町にきたときは、いつも泊まっていたようです。最近リニューアルされ、すっかり小奇麗になっていましたが、たしかに居心地の良い宿でした。

 

 インスブルックのホテル「ビンダース」

 

 

1980年代の後半から2000年を少し越えた頃までのスキージャーナルは、前田さんの写真が満載でした。アルベルト・トンバからヘルマン・マイヤーへ、岡部哲也から木村公宣、佐々木明へという時代です。職人肌のカメラマンで、選手がいきなり飛び出てくるようなむずかしいシーンでも、いつもきっちりピントがきていました。スキージャーナルの表紙を何度も飾ったので、彼の写真のファンだという読者の方も数多くいたのではないでしょうか。
やがて私がフリーランスとなり写真も撮るようになると、前田さんは使い古しのアイゼンを私にくれました。カメラマンにとっては必需品。凍結したコースサイドで撮影するには、アイゼンがないと滑落してしまいます。
「これを俺だと思って使ってくれ」「わかりました。形見だと思って大事にします」と冗談のつもりでそんなやりとりをしたのも、つい昨日のことのようです。それからいろいろあって、前田さんはワールドカップの撮影には来なくなりましたが、
「マエダは ナニシテル?」 コースサイドでレースの開始を待つ間、外国人のカメラマンから尋ねられることもしばしばありました。
「マエダは ゴルフのシャシンをトッテルンダヨ」と答えるとみな
「ソウカ ヨロシクツタエテクレ」と言いました。
そして私は、彼から譲り受けた古ぼけたアイゼンを今でも愛用しています。

 

 前田さんから譲り受けたアイゼンは塗装は剥げ落ちサビだらけ。でもまだ現役



昨年のちょうど今頃、前田さんは取材先のホテルで心臓発作を起こし突然亡くなりました。たとえ冗談だったとしても、あのとき「形見」だなんて言わなければよかったと後悔しましたが、もう遅いですね。
セルデンにもふたりで何度も来ました。前田さんは硬い急斜面にへばりつき、いつも素晴らしい写真を撮ってくれました。

 

2017/18シーズンのワールドカップは明日開幕。そんな彼の魂を受け継いで、今年も気合を入れてシーズン最初のレースを迎えたいと思います。

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