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ヨーロッパカップ男子スラローム第3戦

 ワールドカップは、昨日からヴァル・ガルディナ(イタリア)でダウンヒル第3戦のトレーニング・ランが始まりましたが、それはパスして、ヨーロッパカップの男子スラローム第3戦に行ってきました。会場はヴァル・ガルディナから車で約1時間のオーバーエッゲン。直線距離は近くても、いったん山を下りて、もういちど登り直さなければならないので面倒です。志賀高原から野沢温泉に行くような感覚でしょうか。  オーバーエッゲンは巨大なスキー場が密集するドロミテのなかでは、比較的小さくて地味なスキー場ですが、毎年この時期に欠かさずヨーロッパカップを開催し続けてきました。初開催が1983年で今回が34回め。ヨーロッパカップにおけるクラシックレースといってよいでしょう。

石井智也(サンミリオンSC)

大越龍之介(東急リゾートサービス)

河野恭介(野沢温泉SC)

加藤聖五(野沢温泉SC)

 ヨーロッパカップは、ワールドカップのひとつ下、コンチネンタルカップに属するシリーズ戦です。他にはノーアムカップ(北米)、ファー・イーストカップ(極東アジア)、サウスアメリカンカップ(南米)、オーストリア・ニュージーランドカップ(オセアニア)がありますが、なかでもヨーロッパカップは群を抜いて高レベルの大会です。シリーズ戦なので、当然総合優勝及び各種目別優勝のタイトルもあります。日本人では過去3人が種目別タイトルを獲得。岡部哲也がスラロームの、川端絵美がスーパーGの、そして滝下靖之(現在の日本チームヘッドコーチ)がダウンヒルのそれぞれヨーロッパカップチャンピオンに輝いています。  例年、ワールドカップの第1シード選手も参加するオーバーエッゲン。今季は現時点での第1シード選手はいませんでした。それでも昨年は第1シードにいたマルク・ディグルーバー(オーストリア)を筆頭に、ワールドカップの10番台、20番台に入賞する力のある選手がゴロゴロ。ある意味ではワールドカップよりも厳しい戦いが展開されています。基本的にはワールドカップへと続く若手の登竜門という位置づけのヨーロッパカップですが、その一方で、調子の上がらないベテランや、負傷明けの選手の調整の場としても機能しています。今回はバンクーバー五輪のスラローム金メダリスト、ジュリアーノ・ラッツォーリやワールドカップで優勝経験のあるクリスチャン・デヴィーレ(ともにイタリア)がエントリーしていました。30番スタートのデヴィーレは、13位と健闘しましたが、ラッツォーリは54番スタートから1本目46位、2本目途中棄権と惨敗。かつての金メダリストが若い選手たちの間でもがき苦しみ、それでも復活をめざしてファイトする姿は感動的でさえありました。

スキーが見えないほど掘れたコースを滑るラッツォーリ。かつての五輪金メダリスも復活に向けて必死だ


そんなもがき苦しんでいるベテランのひとりが今シーズンの湯浅直樹です。ワールドカップではレヴィ、ヴァル・ディゼールとともに不本意な成績に終わり、苦しいシーズンスタートとなりました。悔しさ・歯がゆさからか、2日前には珍しくフェイスブックに熱い胸のうちを投稿。次のワールドカップまでにヨーロッパカップで調整することを宣言していました。しかし結局この日湯浅は出場を見送りました。古傷である膝の状態が思わしくなく、今はレースよりも治療とフィジカルトレーニングに専念すべきという結論に至ったようです。次のワールドカップ第3戦までは、あと10日間。時間的猶予はそれほど多くはありませんが、少しでも良いコンデイションで得意コースでのレースに臨んでほしいと思います。

ヴァル・ディゼール1本目で転倒した湯浅直樹(スポーツアルペンSC)。悔しそうにコースを見上げていた

 この日出場した日本選手は、ナショナルチームメンバーの大越龍之介、加藤聖五に加えて、今季はメンバー外となった石井智也、河野恭介の4人でした。スタート順は、大越32、河野60、石井65、加藤87。コースは表面こそ凍っていましたが、その層は薄く、想像よりも早い段階で雪が割れてきました。したがって良い条件で滑れたのは20番台までの選手のみ。後は掘れたコースのなかでいかにスキーをコントロールするかという勝負になりました。昨シーズンから使用するコースが変わり、前半3分の1が急斜面、中間3分の1がほぼまっ平ら、そして終盤3分の1が中斜面というプロフィールです。

1本目は、荒れた急斜面を何とか乗り切ったと思った瞬間、右ターンでポールをまたいでしまった加藤以外の3人が完走。しかし、大越と河野のふたりはミスが目立ち、2本目のフリップ30に入れませんでした。大越は44位、河野は50位で2本目に進みましたが、いずれも途中棄権に終わりました。  そんな中で気を吐いたのが石井智也です。


1本目は65番スタートから27位。4番目という好条件で滑った2本目は、前半の急斜面でミス。ほとんど止まりかけながら、辛うじて立て直し、その後は気迫あふれる滑りで27位の順位を守りました。 この映像からもわかるように、決定的なミスでした。急斜面が終わりかけていたため、緩斜面につなげるべきスピードがほぼ消滅。もっとも失敗してはいけないところで失敗したわけです。ここで失ったタイムは少なく見積もっても3秒はあったでしょう。にもかかわらず2本目のベストタイムから4秒落ちというのは、相当頑張って挽回したことになります。上位進出のチャンスを逃したのは残念ですが、次のレース、さらには年末の全日本選手権に向けて、さらに調子を上げて欲しいところです。 この動画は、優勝したマテイ・ヴィドヴィッチ(クロアチア)の2本目の滑りです。

大エースだったイヴィッツァ・コスタリッチが引退したクロアチア。イヴィッツァの後継者と期待される選手も何人かいましたが、いずれもトップに定着するには至っていません。はたしてこのヴィドヴィッチはどうでしょうか。24歳のスラローマーの今後に注目したいと思います。 公式リザルトはこちら

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