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ヴァル・ガルディナSGはヨーゼフ・フェルストルが初優勝

 かつてヴァル・ガルディナのダウンヒルは、番狂わせの起こるコースとして知られていました。ジャンプが多い高速コースであるということともに、コースを見下ろすようにそびえる奇峰サッソルンゴに遮られ、時間によって太陽が隠れたり現れたり。したがって雪面の滑り具合が微妙に変化し、それがレース結果に思いがけない影響を与えるのです。ワールドカップ史上もっとも遅いスタート順からダウンヒルで優勝したのは、リヒテンシュタインのマルクス・フォーザーですが、その記録が生まれたのが1993年のここヴァル・ガルデーナ。彼は66番という普通ならば絶望的なスタート順で滑り、見事に優勝しました。このレースがデビュー2戦目というまったくの無名選手の快挙に、ゴールエリアは騒然。おまけに2位となったヴェルナー・フランツ(オーストリア)も当時はまったくダークホース。FISの公式サイトにも記録が残っていないので、フランツのスタート順は手元では不明ですが、たしか50番台だったと思います。ふたりのアウトサイダーに優勝をさらわれたマーク・ジラルデリ(ルクセンブルク)の憮然とした表情(もっとも彼はいつでも不機嫌そうな表情をしていましたが)が印象的なレースでした。

圧倒的な存在感の奇峰サッソルンゴ。太陽は山の向こうを左から右に回る(写真はDHトレーニングラン)

 そんな大昔の記憶を呼び戻してくれたのが、昨日行なわれたダウンヒルのトレーニング・ランです。ソチ五輪ダウンヒルの金メダリストのマティアス・マイヤー(オーストリア)がベスト・タイムをマークしたのは順当ですが、2位にビブ68番のベンジャミン・トムセン(カナダ)、3位にビブ55番のオトマール・シュトリディンガ―(カナダ)という遅いスタート順の選手が入ったのです。これはもちろん本人の滑りが良かったことももちろんあるでしょうが、途中、コース上に深い霧が立ち込めたため数度にわたる長い中断があり、それによって太陽の位置が大きく動いたことの影響も無視できないのではないでしょうか。この第2トレーニングランは、午後0時15分始まって、最終走者が滑り終わったのはほとんど4時近く。この間にはコースの滑走性が大きく変化したと思われます。  さて、それはさておき、今日はこのヴァル・ガルディナで男子スーパーG第3戦が行なわれました。優勝したのは、ドイツのヨーゼフ・フェルストル。29歳とベテランと呼んでもいい年齢ですが、優勝はもちろんワールドカップの表彰台に立つのも初めての経験です。高速系のスペシャリストで、これまでの自己最高位は昨年のサンタ・カテリーナSGで記録した5位という選手。強豪ひしめく中で、しかも2番というスタート順でのいきなりの優勝は、番狂わせとは言わないまでも、やはり意外な結果でした。

ヨーゼフ・フェルストル(ドイツ)

 しかし、本人は 「4年前にコーチをはじめほとんどのスタッフが入れ替わり、平昌五輪に向かって本当に厳しいトレーニングを積んできた。その成果は着実に表れていると思う。これまでは技術系チームが注目されてきたけれど、今年はビーヴァー・クリークのダウンヒル第2戦で、トーマス・ドレッセンが3位に入賞。これがチーム全員の自信となっている」と冷静に初勝利を分析します。父親は、かつてキッツビュールのダウンヒルで2回の優勝経験を持つセップ・フェルストル。2014年の春には日本にやって来て、おんたけ2240スキー場で行なわれたFISレースにも出場しています。このときのフェルストルはダウンヒルとスーパーGで計4戦中、優勝1回、2位3回。ドイツチームの改革がこの直後に始まったとすれば、この遠征は彼にとっても有意義だったといえるのではないでしょうか。 「とっても良い経験になった。コースも最高だったし、とても温かく迎えてくれたのが記憶に残っている」と日本での経験を語ってくれました。


マックス・フランツ(オーストリア)

2位は、マックス・フランツ(オーストリア)で、フェルストルとはわずか100分の2秒差。彼は自身のワールドカップ初優勝を昨年のヴァル・ガルディナダウンヒルで記録しており、こことは相性が良いのでしょうか。僅かの差で勝利は逃したものの素晴らしい滑りでした。 3位は同じオーストリアのマティアス・マイヤー。フランツとは対照的に、一昨シーズン、このコースで激しくクラッシュして第3脊椎骨骨折という重傷を負った経験を持っています。 「もちろん、スタート前にあの怪我のことは頭にあった。復帰まで長い時間がかかったが、今はもう何の不安もなく滑っている」とマイヤー。レイク・ルイーズDHでの2位に続き、今季2度目の表彰台に立ちました。


マティアス・マイヤー(オーストリア)

 昨日のダウンヒルのトレーニングラン同様、この日のスーパーGも厄介な霧に災いされ、2度にわたってレースが中断。1度目の中断以降は細かい雪も降り始め、後続の選手にとっては不利な状況となりました。そんななか、このコースを得意とするチェティル・ヤンスルッドは第2中間計時を3位で通過する快走を見せていましたが、多くの選手が失敗した難所で大きくタイムロスし、表彰台を逃してしまいました。 その後再びコース上部が霧に覆われたため中断。結局、天候が好転する見込みがなく、エントリー80人中39人の選手が滑り終わった段階で終了。残る41人はスタートを切ることさえできませんでしたが、レースは成立です。日本からただひとり出場予定だった須貝龍はも、この日は出番なく終了。明日のダウンヒルに悔しさをぶつけることになりました。



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