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ヨーロッパカップ男子スラローム第5戦/ポッツァ・ディ・ファッサ

パソコンがウンウン唸りだしたので、手短にレポートします。


12月18日、ドロミテ山塊のどまんなか、ポッツァ・ディ・ファッサで行なわれたヨーロッパカップ男子スラローム第4戦。1本目が2時、2本目5時半スタートというちょっと変則的なスケジュールでした。全体的にローカル感あふれる運営で、先週オーバーエッゲン(直線距離では約20km)で行なわれたヨーロッパカップに比べると、だいぶゆるい感じの大会という印象です。 ただし、レースそのものはレベルの高い厳しいものでした。オーバーエッゲンのメンバーに加えて、ステファノ・グロス(イタリア/ ヴァル・ディゼールのワールドカップ第2戦で1本目トップタイム)、ダニエル・ユール(スイス/WCSL12位)ら、ジャン・バティスタ・グランジ(フランス/世界選手権のSLで2回優勝)といったビッグネームも出場。さらに前走をジュリアン・リゼロ−(フランス/WCSL13位)がつとめるという演出? もありました。またコースコンディションも厳しく、早いうちから雪面が荒れ、加えてターンのきつい難しいコースセッ。そのため、103人の出場選手中、1本目ですでに40人がゴールできず、60人が進んだ2本目でも27人がアウト。結局順位がついた選手は37人のみという結果でした。

薄暗い照明、ラフなコース。アウトする選手が続出の難しいレースでした

優勝したのはヴァル・ディ・ファッサ在住のご当地選手、ステファノ・グロスでした。1本目21番スタートでトップのドミニク・シュテーレ(ドイツ)にコンマ5遅れの6位につけ、2本目に逆転優勝。2本目もタイム的には13位と特別速かったわけではありませんが、1本目の上位選手が相次いで順位を落とす中で、2本の滑りを平均的に揃えたことで勝利が転がり込んできました。6位+13位で優勝というのは、珍しいことだと思いますが、これもワールドカップとヨーロッパカップのコースの違いなのでしょうか。結果的にはワールドカップ・ランキング(WCSL)6位の貫禄を見せつける勝利となりました。

ステファノ・グロスの2本目。最初にノーマルのスピードで、次に同じ映像をスローで

レース終了後、夕食をとっていたピッツェリアに、彼女(奥さん?)を伴って現れたグロス。店内のテレビではアルタ・バディアのワールドカップ中継を流していましたが、ちょうどマッツ・オルソン(スウェーデン)がヘンリック・クリストッファーセン(ノルウェー)を破って優勝を決めた瞬間というタイミング。それまでテレビを見入っていたバーカウンターのお客から盛大な祝福を受け、笑顔で応えていました。

グロスの1本目の滑り。1本目6位で2本目13位。それでも合計では優勝という不思議な展開だった


日本からはナショナルチームの湯浅直樹(スポーツアルペンSC)、加藤聖五(野沢温泉SC)に加えて、このところ調子を上げている石井智也(サンミリオン)、河野恭介(野沢温泉SC)の計4人が出場。結果からいうと全員が1本目消えるという残念なレースとなりました。湯浅は、ヴァル・ディゼールのワールドカップの後、以前から痛みを感じていた左膝の状態が悪化し、その後の8日間はまったくスキーをせずに、フィジカルトレーニングの膝の治療に専念。この日の午前中に久々の雪上練習を軽く行なったのみで、レースに臨みました。 スタッフの話を総合すると、状態はかなり悪く、滑りの調子自体も下降気味。身体が万全ではないだけに、滑る本数も制限せざるをえず、なかなか復調のきっかけがつかめないでいるようです。1本目、終盤までは無難に滑りましたが、本来の湯浅のアタックは見られずじまい。ゴール前で旗門不通過の判定となり、2本目に進むことなくレースを終えました。


1本目で失格となった湯浅直樹。滑り自体もコンデイションの悪さを感じさせるものだった

日本では、「湯浅 左膝骨挫傷」というニュースが報じられたようです。これは湯浅の膝に新な怪我が発生したことではなく、以前から痛みのあった左膝の精密検査を受けた結果そのような診断が下ったということなのでしょう。とは言え、現在の彼のコンディションが、かなり深刻な状態であることは間違いありません。22日のワールドカップ(マドンナ・ディ・カンピリオ/イタリア)には出場予定ですが、はたしてどのような滑りを見せるのか。かつて激しい腰痛をこらえながら自身初の3位表彰台に立ったコースですから、ファンとしては期待したいところ。でもけっして楽観はできない状況です。

河野恭介。ヨーロッパカップではまだ自分の滑りが出せないでいるが、懸命の挑戦を続けている

日本選手の2番手として滑った河野恭介は、65番目のスタート。中斜面、急斜面、緩斜面とと続くコースのほぼ半ば、中間計時地点の直前でコースアウトに終わりました。今年からマテリアルをロシニョールにチェンジした彼は、シーズン当初なかなかセッティングが決まらず苦労したようですが、自らロシニョール本社と掛け合い、ようやくしっくり来るようになったそうです。もともとスキ―の性能自体には信頼をおいているだけに、本人は前向き。股関節に若干の痛みを抱え、まだ結果に結びつくには至っていませんが、今後は期待できそうです。


湯浅の滑りをコースサイドで応援する日本の3選手。左から加藤・河野・石井


石井智也は71番で滑り、スタート直後の緩斜面でいきなりのミス。その後の急斜面は荒れたコースをクリーンなターンで乗り切りましたが、緩斜面の入り口でコースアウトしてしまいました。第1戦22位、第3戦27位とヨーロッパカップ・ポイントを獲得。2日前に行なわれた第4戦のパラレル・スラローム(PSL)でも17位と安定しています。遅いスタート順からのアタックとなり、失敗覚悟の勝負をかけざるを得ない状況ですが、そのなかでよく生き残って結果を出しています。この日は薄暮でコース状況が見にくい不運もあり、2本目に残ることはできませんでした。

石井智也は3戦連続のカップポイント獲得はならなかったが、滑りは好調


日本の4人中、もっとも遅い92番めに滑った加藤聖五は、河野とほぼ同じところで失敗。自分の滑りができないまま消えていきました。これでヨーロッパカップでは3レース連続の途中棄権ですが、本人はこれも試練と冷静に受け止め、挑戦を続けています。まだ19歳の彼は、ヨーロッパカップでは、まだまだ若造。遅いスタート順、したがって荒れたコースというのは、越えなければいけない大きな壁です。今はその手前でもがいている状態ですが、そうした苦労もヨーロッパにいるからこそ。これこそが彼が日本を離れオーストリアに留学している最大の狙いでしょう。問題はFISポイントをとり、いかにスタート順をあげていくか。現在の持ちポイントのレベルだと、1点の更新でもスタート順はかなり早くなるはずで、高いレベルで揉まれる一方で、ポイント更新の戦略を立てることも重要になってくるでしょう。

ちなみにポッツァ・ディ・ファッサは、来シーズン、2019年のジュニア世界選手権の会場。加藤は年齢的には出場の権利があります。もしメダルを獲得すれば、2008年のスペイン大会スラロームで銅メダルに輝いた石井智也以来(このときの金メダルはマルセル・ヒルシャー)。ぜひこの地で栄冠を掴んでほしいものです。


92番スタートから激しくアタックした加藤聖五。果敢な挑戦で突破口を開いてほしい

湯浅を除く3人はこれで帰国。平昌五輪の切符のかかる全日本選手権(12月26~28日)に備えます。


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