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クリストッファーセン ついにヒルシャーを破る!

前日の夕方からふたたび降り始めた雪は、朝になっても勢いを増すばかり。今年のハーネンカム大会最後の種目スラロームは、タフな気象条件のなかで行なわれました。 早朝の時点で積雪はすでに30cm超。それでも夜を徹したコース整備によってキッツビュールのスラロームコース「ガンスラン」は雪の下から掘り出されました。ただ、一見アイスバーンに見える斜面も、降り積もった大量の湿った雪のために、氷の層はあまり厚くはなく、レースが進むにしたがって表面が割れてきました。したがって遅いスタート順の選手には厳しい条件となり、50番スタートの大越龍之介(東急リゾートサービス)68番スタートの石井智也(ゴールドウインSC)はともに1本目で終了。大越はベストタイムのヘンリック・クリストッファーセン(ノルウェー)から5秒15遅れの49位に沈み、石井は第1計時を通過した後、夏道が横切る部分のウェーブで飛ばされコースアウトです。

いろいろなことを考え、力みすぎたという大越龍之介。五輪への挑戦は終わった


大越はこのレースで20位以内に入ると平昌五輪出場への可能性が大きかったのですが、それも幻に。夢舞台への挑戦はこれで終わりました。 「正直言って、今日は緊張した。ウェンゲンのときは無心で挑んだけれど、19位になって可能性が出てことで、この1週間はいろいろなことを考えた。その分、欲が出て今日は力んでしまった」と敗因を振り返ります。そして 「ウェンゲンではツルツルのアイスバーン、難しいセットという自分の得意とする条件が揃っていたので、インスペクションの時から行けそうな予感はあった。でも、今日の条件では厳しかった。結局、力を出せる条件が狭すぎたということ。もっと対応できる幅を広げないと、世界の舞台では戦えないと痛感した」と言葉をつなぎました。ただし、ワールドカップはまだ続きます。中1日あけて23日にはシュラドミングでナイト・スラローム。5万人の大観衆の集まるワールドカップ最大のスラロームレースですから、そこに向け気持ちを切り替えてほしいと思います。


コーチのゲオルグ・ヘルリゲルと長い間話した後、悔しそうな表情で会場を去る大越

石井はすぐにイタリアに移動。当初はシュラドミングへの出場も考えていましたが、ヨーロッパカップのGS2戦がヴァル・ディゼールからリスケジュールされてきたので、そちらに出場。22、23日とフォルガリアで連戦です。

荒れたコースに力を発揮できなかった石井智也

エイリアン対人類の戦い?

レースの結果ですが、優勝はヘンリック・クリストッファーセン。1本目でトップに立ち、2本目もリードを守り今季初優勝を記録しました。ここまでスラローム5連勝(オスロのパラレルスラロームでは6位)のマルセル・ヒルシャー(オーストリア)は2位。久々に負けました。いや2位ですから負けたというのは違うかもしれませんが、人々の記憶の中には“ヒルシャーがクリストッファーセンに負けたレース”として残るのではないでしょうか。少なくとも彼が完全無欠のサイボーグではなく、時には負けることもある人間であることを示したレースだったのは間違いありません。3位にはダニエル・ユール(スイス)が入り、初めてトップ7で滑るレースで、初めてのワールドカップ表彰台です。


3位のダニエル・ユール(スイス) 人類の中では1位だった

「ワールドカップで初めて表彰台に立つのだったらどこがいい? と聞かれたらキッツビュールはそのリストの上位にランクされる会場だ」。記者会見でのユールは、ちょっと微妙な言い回しで喜びを表現しました。じゃあ一番はやっぱりシュラドミングか? と突っ込みたくなりますが、でも、この難しい状況の中で、2本目に順位を上げた滑りは素晴らしかったと思います。 「ふたりのエイリアン(クリストッファーセンとヒルシャー)に続く3位だから、人類のなかでは僕が一番速かったということだね。」とジョーク交えながらも、これは素直な感想でしょう。異星人扱いされたふたりは「俺たちエイリアンだって」と言って互いに顔を見合わせていましたが…。・

ヒルシャーの1本目は3位のタイムでした。昨年は1本目1秒02遅れの9位からの大逆転で優勝したヒルシャー。ただし、昨年はクリストッファーセンが1本目で転倒して早々に消えていました。ヒルシャーの2本目は素晴らしく、スラローム6連勝に向けて激しく追い上げましたが、この日はクリストッファーセンの気迫が上回った印象。タイム差をわずかに詰めるだけに終わりました。「1本目はひどい滑りだった。ヘンリックとミヒ(ミヒャエル・マット)のふたりだけが別格だった。2本目は良い滑りができたけれど、タイム差が大きすぎて追いつけなかった。今日はヘンリックの勝ち。勝者にふさわしいレースをしたと思う」とレース後のヒルシャーはさばさばした表情でライバルを称えました。通算勝利数は53のまま。ヘルマン・マイヤーの持つオーストリア男子選手の最多勝記録54に並ぶことはできませんでしたが、本人はそんな記録のことはまったく気にしている様子はありません。おそらく頭のなかは、2日後のシュラドミングでいかに勝つかということだけだったのでしょう。


ヒルシャーだって負けることがあるということがわかったレースだった

鹿(ヒルシュ)のかぶりもので揃えたヒルシャーのファンたち

一方のクリストッファーセンはさすがに嬉しそうでした。2本目、彼のスタート前には一段と雪が激しくなりましたが、それを切り裂くような力強い滑り。コース終盤、短いアップヒルを上ったところで一瞬バランスを乱したものの、すばやくリカバリーしてゴールに飛び込んできました。そして激しいアクションで喜びを爆発させ、最後は雪の上に倒れ込みました。今シーズン初めて見る勝利の雄叫びです。 「ここまで7レースすべて表彰台に登りながら1度も勝てなかったので、今日の勝利は本当に嬉しい。最高の気分だ」とクリストッファーセン。これでスラロームで通算15勝目となり、この日弟ミヒャエル・マットの応援に来ていたマリオ・マットを抜き、現役では2位。歴代でもイヴィッツァ・コスタリッチとともに5位にランクされる成績です。

以下は共同会見後のインタビューです。 Q 今日はヒルシャーに0秒97差つけての勝利。このタイム差は充分? それとももっと差をつけたて勝ちたかった? A 笑いながら)100分の1秒でも1秒でも勝ちは勝ちだよ。でも今シーズンはこれまでどうしても勝てずにストレスがたまっていたので、1秒近くつけたことで、まあ少しはスッキリしたかな。 Q 雪が激しく、とくに視界が悪くなったが問題はなかったか。

A 雪のために見えにくかったのは確かだ。だから2本目は途中でゴーグルをぬぐった。それからは大丈夫だった。いざというときにそういう練習もしているからね。(映像では、たしかに2本目の中盤過ぎで、ターンとターンの間で一瞬右手の甲でゴーグルをこすっているシーンが確認できる) Q スタート前、いつものようにラース(父親)と無線で話したのか? A もちろん。 Q どんなことを?。 A 特別なことはないよ。自分とスタッフの皆のことを信じて思い切り行けと。 Q 表彰式では新しいスキーを掲げていたけど、あれはオリンピック用のモデル? A いや来シーズン用のモデルで、オリンピックで使うことはないだろう。 Q もうテストはしている? A ロシニョールのスタッフの間ではしているけれど、僕自身はまだだ。今日持っていたスキーもコスメティックが新しいだけで、中身は現行モデルなんだよ。 Q これでシュラドミングがますますおもしろくなってきた。よいレースを期待しています。 A ありがとう。頑張るよ。


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