“ウェンゲン騒動” 解決に向けた新な動き

May 30, 2020

先日ウェンゲン(スイス)のワールドカップ、ラウバーホルン大会の組織委員会とSwiss-Ski(スイススキー連盟)との対立についてお伝えしました。
あらましについては、こちらの記事(https://is.gd/fuOzSK)を読んでいただければと思いますが、簡単にいうと、両者の間にはラウバーホルン大会の収益の分配及び費用負担の割合を巡って、この4年来激しく衝突してきたという経緯があります。対立は長期化かつ泥沼化。裁定がCAS(スポーツ仲裁裁判所)に委ねられたものの、それでも解決に至らなかったことから、Swiiss-SkiはFIS(国際スキー連盟)に対して2020/21シーズン以降、ラウバーホルン大会をワールドカップのカレンダーから削除するように求めたというのが先週までの経過でした。

 

2020/21シーズン、つまり今度の冬のスケジュールに関してはすでにFIS理事会の承認を受けた決定事項にあたるため、これを覆すことは事実上不可能ですが、2021/22シーズン以降、仮にSwiss-Skiの要求が通ればワールドカップからラウバーホルン大会が消えてしまう可能性があったわけです。ワールドカップの数あるレースの中でも最古の歴史を誇り、最長のダウンヒルコースと最高難度のスラロームコースを持つウェンゲンのラウバーホルン大会。そんな大切なレースが消滅するかも知れないというニュースは、世界中のワールドカップ・ファンを驚かせ嘆かせました。当サイトでの反響も大きく、たくさんの人がことの成り行きに注目したことでしょう。
この“騒動”の背景には、ラウバーホルン大会が半ば恒常的に多額の赤字を計上してきたという事実があります。たとえば2019年の大会の総予算は900万スイスフラン(約10億円)。観客動員数は過去最高でしたが、それでも27万スイスフラン(約3000万円)の赤字だったと伝えられています。毎シーズン大きな注目を集め、その様子がヨーロッパ各国をはじめ多くの国々で放映される華やかさとは裏腹に、興行的にはけっして大成功だったわけではなかったのです。
 

ラウバーホルン大会の魅力


毎年1月半ばにウェンゲンで行なわれるラウバーホルン大会は、ワールドカップのなかでも特別な環境のなかで行なわれるレースです。舞台はアルプスのど真ん中。アイガー(標高3970m)、ユングフラウ(4158m)、メンヒ(4107m)といった4000m級の名峰に囲まれたウェンゲンへは一般車の乗り入れが禁止されており、交通機関は登山電車のみ。ホテルの数も決して多くはありません。加えて、ダウンヒルのスタートに行くには、登山電車とリフトを乗り継いで1時間以上かかります。ファンにとって、現地に足を運ぶにはかなりハードルの高いレースだといってよいでしょう。したがって、観客数はダウンヒルで約3万人、スラロームで約1万人。たとえばクラシックレースとして並び称され、交通の便にも恵まれたキッツビュールのハーネンカム大会に比べると約半分にとどまります。より多くの観客数が望めれば、あるいは赤字は解消されるかも知れませんが、交通手段のキャパシティを考えれば、おそらくこれが限度だと思われます。
もっとも、苦労してたどり着くことができれば、そこは息を呑むような絶景が広がるこの世の別天地。大会の雰囲気はとてものびのびとしていて、ある意味牧歌的でもあります。スポーツ・エンターテイメントとして、極めて今風に完成度の高いハーネンカム大会とは、その点でも対照的ですが、そうした素朴さこそがラウバーホルン大会の大きな魅力といえるような気がします。

 



しかし、現地での報道によれば、幸いにも事態は解決の方向に進み始めたようです。

このニュースがスイス国内外を駆け巡った数日後、Swiss-Ski の有力な支援者のひとりが30万スイスフランを寄付すると表明。大会の赤字額をほぼカバーできる資金を得たことで、Swiss-Ski はFISに対する要望を取り下げたのです。おそらくこれを受けてのことでしょう、5月26日付けでFISから発表された2020/21シーズンのワールドカップ・カレンダー及び2021/22シーズン以降の暫定カレンダーには、従来通りの日程でラウバーホルン大会が開催されることが示されています。


「スイススキーがラウバーホルンレースの将来に向けた実行可能な解決策を見つけ、スノースポーツ全般をサポートできるように支援したい」この寄付を申し出たイェルク・モーザー氏はこう語っています。
Swiss-Skiの会長ウルス・レーマン(1993年の盛岡・雫石世界選手権のダウンヒルチャンピオンです)によると、Swiss-Skiは、30万スイスフランをそのままラウバーホルン大会の組織委員会に送ると述べています。その一方でレーマン会長は、大会組織委員会にマーケティング部門の強化が必要不可欠だと強調。一例として、岩と岩の隙間から大きく飛び出す名物ジャンプ、フントショフにスポンサーの広告アーチを架けることなどを提案しています。


また、レーマンは国や州からの支援の可能性も探るとし、それでも資金不足が解決されない場合はSwiss-Skiが最大10万フランの資金を提供すると語りました。

 

これらのニュースを総合して考えると、ワールドカップとしてのラウバーホルン大会の存続はほぼ間違いないと思われます。レーマン自身、往年の名ダウンヒラーですし、ラウバーホルンDHを何度も戦っています。引退後もダウンヒルのカメラ前走を務めるなど、この大会の価値を誰よりも理解しているはずの人物。またこの秋で勇退するジャン・フランコ・キャスパーの後を受けてFIS(国際スキー連盟)の会長職につくことが確実とも言われています。ラウバーホルン大会をワールドカップから外したら、大きな批判を浴びることは確実なので、彼の本音としてもそんな事態は避けたいところ。今後の交渉を通じて、最終的にはうまく落とし所を見つけることでしょう。
レーマンとラウバーホルン大会組織委員会会長は、近々直接会って協議する予定。その席で大会存続に向けた具体的な道筋が話し合われるはずです。









 

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