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女子スラローム第7戦(2016年1月15日 フラッハウ/オーストリア)

ズズロヴァ連日の優勝

ヴルホヴァも3位でスロヴァキア歴史的勝利

 

女子スラローム第7戦は、非常に緊迫したレースとなった。優勝したのは、ヴェロニカ・ヴェレーズ・ズズロヴァ(スロヴァキア)で、火曜のナイトレースに続き2連勝。2位はスラロームのポイント・リーダー、フリーダ・ハンスドッター(スウェーデン)、3位にはペトラ・ヴルホヴァ(スロヴァキア)が入った。

 

火曜の夜に続きワールドカップのナイトレース2連勝のヴェロニカ・ズズロヴァ

 

「前回の優勝までには2年間もかかったのに、今回はたった2日で再び優勝。今週は夢の様な1週間だった。それに、明日からしばらく休めることがうれしい。家を離れて長い間ワールドカップを転戦するのは、とても大きなエネルギーが必要。この休みには、久々に自分の家に帰れるので、しっかり休んで疲れをとりたい。そして次のレースに向けてまた頑張るわ」と言ってズズロヴァは笑った。帰るのが楽しみとだいう家は、スロヴァキアではなくフランスにある。ジュネーブとシャモニーの間にある小さな村だ。なぜフランスなのかといえば、彼女の夫、ローマン・ヴェレーズはフランスチームのコーチをつとめるフランス人だからだ。彼女のはくサロモンの本社があるアヌシーにもほど近く、静かで美しい村だという。「今シーズンの好調の最大の要因は、マテリアル。それについて詳しく説明することはできないけど、スキーやブーツなど、多くの面で私の滑りにフィットするようになった。それがレースでの自信と余裕につながっていると思う。今は滑るのが楽しいし、レースが楽しめるようになった」この2勝でワールドカップポイントを200点加算。スラロームの種目別ランキングではシャルカ・ストラコヴァ(チェコ)を抜いて2位に浮上した。トップのフリーダ・ハンスドッターとの差は85点だ。

大きなミスもあったが、激しいアタックで2位入賞のアレクサンダー・オーモット・キルデ。初の種目別チャンピオンに輝いた

2連勝で、初のスラローム種目別タイトルも見えてきた

「スラロームはつねに失敗と隣合わせの種目。だから残りのすべてのレースで集中して行きたい。今はとてもよい波に乗っているので、これを続けていければと 思う。タイトルが取れるかどうかはわからないけど、シーズンの最後に、どんな結果が残せているか、私自身も楽しみにしている」この勝利が二日前のそれと違うのは、3位に同じスロヴァキアの後輩、ペトラ・ヴルホヴァが入ったことだ。表彰台の上にふたりのスロヴァキア人。もちろんアルペンスキーの歴史の中で、初めてのことである。「今年はシーズンの初めからスロヴァキアにとって歴史的な出来事がたくさんあった。そして今日、ふたりが同じレースで表彰台に。生涯忘れられない日になる。私もペトラを長い間、励ましてきた。そして今シーズンようやく彼女が私に近づいてきた。彼女は今やライバルのひとりに成長したけれど、でも戦う相手は 彼女だけではないから、ペトラのことを特別に意識することはない。ただ、スロヴァキアはスポーツに関してとても熱狂的な国だから、以前はときどき周囲からの期待が重圧に感じることがあった。今は私だけではなくペトラがいるわけだから、その点ではずいぶんと変わった。それに私自身もいろいろな経験を積んで、 重圧にどう対応するかなど、レーサーとして強くなったのだと思う」外見的な印象とはうらはらに、彼女の語り口はとても柔らかい。どんな質問にも丁寧に答え、共同記者会見の後には、スロヴァキアの記者たちに囲まれてさらに長時間話し込んでいた姿が印象的。長い時間をかけて経験を積み、ようやくたどり着いたレーサーとしての成熟を感じさせるベテランである。

1本目は5位につけていたペトラ・ヴルホヴァ。まだ荒削りだが成績は安定してきた

一方のペトラ・ヴルホヴァは、ありあまるエネルギーをストレートに発散するタイプのようだ。それが若さというものかもしれないが、とにかくいつでもどこでもフルパワー。滑りの面でも、恵まれた身体をすべてスキーにぶつけるような荒々しさを感じる。同じロシニョールのハンスドッターが、トップからテールまでスキーのすべてを使いながら、スムーズにターンをつなげるのに対して、ヴルホヴァは、バインディングの前後のわずかな部分だけしか使わず、そこをガツガツと雪面にぶつけるような印象がある。したがって時として過剰なエッジングとなりスピードを失ってしまう。反面、リズムが合った時には、すばらしく切れのいい滑りとなる。この日の2本目はスタート直後はあまりにガツガツ行き過ぎたが、途中でそれを感じて滑りを変えたように見えた。そこからのスピードは素晴らしく、暫定トップでフィニッシュ。電光掲示板のグリーンの数字を確認した彼女は、両手を大きく広げ大きく吠えた。そして、さらに吠えること吠えること。い くら吠えても興奮がおさまらないのか、暫くの間、口を大きく開けて激しく咳き込むほどだった。そんなパワーあふれる彼女は、一昨シーズンのジュニア世界選手権のスラロームで優勝している。ミカエラ・シフリン(アメリカ)とは同じ1995年生まれ の20歳。先に世界の頂点に立ったのはシフリンだが、ヴルホヴァもそこに近づきつつあることは間違いない。今後ふたりのライバル関係は、新たなステージに突入するだろう。怪我のため、戦列を離れているシフリンがワールドカップに戻ってきた時、ふたりがどんな戦いを展開するのか、とても興味深い。 

ベストタイムでゴールし、激しく吠えるヴルホヴァ

記者会見の終了後、スイス人の記者がヴルホヴァを呼び止めた。

「スイスでは、あなたの滑りはフレニー・シュナイダーのそれに似ていて、彼女の再来だと言われている。それについてどう思う?」

記者としては、おそらくこんな答えを期待していたのだろう。

「ワールドカップで55勝もしている偉大な選手にたとえられるなんて、とても嬉しいわ」

 

ところがヴルホヴァは

「フレニー…? シュナイダー…??」とすっかり困惑気味。近くにいたスロヴァキア人記者が助け船を出したが、それでも彼女はフレニー・シュナイダーが誰だかわからない。しばらく言葉に詰まった末にようやく

「わからないわ。私は私で誰にも似ていないと思う」と答えた。

公式リザルト

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