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北米の雪不足でスケジュールが大きく変更

シーズンの序盤は比較的雪に恵まれ、順調なスタートを切った2016/17シーズンのアルペンスキー・ワールドカップですが、ここに来てスケジュールに大きな変更が余儀なくされました。理由は北米の雪不足。充分な降雪がない上に気温が下がらず、人工降雪機の稼働もままならない状況です。もうすぐ寒気がやってくるという予報は出ているものの、コース作りのタイムリミットもあり、国際スキー連盟(FIS)は、いくつかのレースのキャンセルを決定せざるを得ませんでした。 まず11月26~27日にレイク・ルイーズ(カナダ)で行なわれるはずだった男子スーパーG第1戦とダウンヒル第1戦、さらに翌週末12月2~4日にビーヴァー・クリーク(アメリカ)で予定されていた男子ダウンヒル第2戦、スーパーG第2戦、ジャイアント・スラローム第2戦も中止となりました。 レイクルイーズでは、その次の週に女子の高速系レースが予定されていますが、こちらは11月21日に行なわれるスノーコントロール(FISによるコースの準備状況の最終チェック)の結果次第によって、レース開催の可否が決定されるということです。 一方、同じアメリカでも東海岸はいくらかマシな状況のようで、11月26~27日にキリングトンで行なわれる女子ジャイアント・スラローム第2戦と女子スラローム第2戦は、コースの準備が整ったために予定通り行なわれます。

中止となったビーヴァー・クリークの3レースを代替開催するヴァル・ディゼール。スラローム、GSともにスタートからゴールまでほぼ急斜面の連続だ



これら中止となった会場の代替レースですが、ビーヴァー・クリークの3レースはヴァル・ディゼール(フランス)が引き受けることになりました。ヴァル・ディゼールは、もともと12月8~9日に男子の技術系2レースを、12月16~18日には女子のアルペン・コンバインド+高速系2レースを行なうことが予定されていたので、ビーヴァー・クリークから移ってきた分を含めると、3週連続計8レースがここで行なわれることになります。ちょっとした世界選手権並の規模ですね。 ヴァル・ディゼールは、かつてシーズンの開幕戦を行なう場所として知られていました。1970年代から1980年代初頭にかけて、ワールドカップはほぼ毎シーズン、ヴァル・ディゼールから始まっていたのです。さらに遡ればヴァル・ディゼールの大会は、ワールドカップが始まる以前から行なわれており、今回が61回目となる歴史あるレースです。大会名は「CRITÉRIUM DE LA PREMIÈRE NEIGE」(直訳すれば「初雪大会」)。つまり、アルプスに本格的な冬の訪れを告げるお祭りだったわけです。現在は、ワールドカップ開幕の地をセルデン(オーストリア)に譲っていますが、地元の人たちにとっては、毎年12月初めにやってくるこの大会は今も変わらず、大きな誇りなのだといえるでしょう。 地元のスキークラブVal d’Isère’s Club des Sports(ヴァル・ディゼール・スポーツクラブ)の会長、ヴァンサン・ジェイは 「過去60年余の歴史を通じて、アルペンレースは我々の遺伝子の中に組み込まれている。これまで数え行きれないほどのワールドカップレースを運営してきたので、短い準備期間でも実行可能だ。3週間で8レースというのは我々にとっても大きなチャレンジだが、こんなチャンスを得たことを誇りに思う」と自信たっぷりに語っています。

ヴァル・ディゼールのコースを得意とするマルセル・ヒルシャー



ビーヴァー・クリークのキャンセルは残念なことですが、選手にとっては大陸間の移動がなくなったのは悪いことではないでしょう。条件の良いヨーロッパで落ち着いて調整できるからです。 このビーヴァー・クリークからヴァル・ディゼールへの会場変更を、もっとも喜んだのは、おそらくマルセル・ヒルシャー(オーストリア)、そしてもっとも残念に思ったのが、おそらくテッド・リガティ(アメリカ)ではないでしょうか。

ヒルシャーにとって、ヴァル・ディゼールはワールドカップ初勝利(2009年のジャイアント・スラローム)をあげたコース。またスラロームの初勝利もヴァル・ディゼールでした。スタートからゴールまでほとんどが急斜面というプロフィールは、彼がもっとも得意とする斜面構成です。ヒルシャー自身、 「体重の軽さが影響せず、あくまでテクニック勝負になるのが、ここの特徴」というように、小柄なヒルシャーには、とてもフィットするコースなのです。

「ヴァル・ディゼールは急斜面ばかりで面白くない」と公言するテッド・リガティ

一方のリガティはここのGSコースが大嫌い。2010/11シーズンに優勝はしているものの、ヴァル・ディゼールでの成績は、総じてぱっとしません。ヒルシャーとは対照的に 「急斜面ばかりで、GS本来の技術を競うコースではない」というのが、彼がこのコースを嫌う理由です。

その反面、中盤に急斜面があるものの、その他はほとんどが中・緩斜面のビーヴァー・クリークではこれまでに6勝(2015年の世界選手権を含む)をあげ、2位2回3位1回。怪我からの復帰をめざすリガティにとっては、ホームコースであるビーヴァー・クリークのキャンセルは、大きな痛手だと思われます。 そんな因縁含みの会場変更。果たして、どんな展開になるのでしょう。 レイク・ルイーズが中止となったことで(こちらの代替地はまだ決まっていません)、高速系レースが始まるのは、例年よりも1週間遅れとなりましたが、その分、伝統のヴァル・ディゼールのコースで白熱した面白いレースが見られることを期待したいと思います。




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