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シフリン、クロンプラッツGSで圧勝。今季早くも10勝目をあげる

アデルボーデンのスラローム終了後、すぐに車で移動。途中スイスとオーストリアの国境近く、マイエンフェルトという村に1泊しました。「アルプスの少女ハイジ」の舞台となった地らしく、“ハイジ村”もあるそうです。ファンにとっては聖地のような場所だと、いまさらながら知りました。宿泊したホテルの名前は「スイス・ハイジホテル」。恐ろしいほど物価の高いスイスにしては安かったので、たまたま選んだのですが、アルプスの山小屋というよりも、実際は小奇麗なビジネスホテルという印象。久々に湯船につかって、移動に次ぐ移動による疲れを癒やすことができましたが、それらしい風情は皆無でした。 もちろんハイジ村による暇などなく、翌日はアールベルクトンネルを抜け、ブレンナー峠を越えてイタリア入り。夕方近く、クロンプラッツに到着しました。

クロンプラッツは、イタリア北部の南チロルと呼ばれる地域の一角で、一般的にはドロミテ山塊のある場所として知られています。人々はイタリア語と同じようにドイツ語を自在に操り、たとえば道路標識はイタリア語・ドイツ語で併記されます。ホテルで出される料理も、イタリア料理、チロル料理が半々といった感じ。周囲をドロミテ特有の奇抜な山容の山々に囲まれた、静かで美しいリゾートです。毎年12月に男子GSが行なわれるアルタ・バディア(今年のレースの様子はこちらから)は車で20分ほど。スキーで行き来することはできませんが、地元の人に「あれが“Gran Risa”(アルタ・バディアのGSコースの名前)だよ」と教えてもらいました。あいにく、どこがそれなのかはわかりませんでしたが…

終盤は片斜面の急傾斜が続き、女子GSとしては相当難しいコースプロフィールだ



火曜日(1月15日)、クロンプラッツでワールドカップ女子GS第5戦が行なわれました。年が明けてからのアルプス諸国は天候が安定せず、連日雪模様。とくにオーストリアでは記録的な大雪に見舞われ、多くのレースが中止されました。石井智也、新賢範、若月隼太、加藤聖五選手が出場を予定していたライターアルムのヨーロッパカップもGS、スラロームともに中止。強風でコースに上るゴンドラが動かず、さらに宿泊していたラムサウの村は雪崩のために停電してしまったということです。 しかし、幸運にもアルプスのイタリア側は好天。ここクロンプラッツでは、ほぼ一日中快晴かつ適度な冷え込みという最高の条件でレースが行なわれました。


余裕すら感じさせたミカエラ・シフリンの2本目の滑り


クロンプラッツがワールドカップの会場に加えられたのは比較的新しく、2年前のこと。相当なワールドカップ・ファンでもその名前はまだあまり知られていないのではないでしょうか。過去2回の大会も種目はGSで、初めての大会で優勝したのは地元イタリアの人気者フェデリカ・ブリニョーネです。昨年行なわれた第2回大会では、ヴィクトリア・レーベンスブルク(ドイツ)が優勝。対照的にこの2シーズンとも、技術系レースでは凄まじい強さで勝ちまくっていたミカエラ・シフリン(アメリカ)は、なぜか相性が悪く、5位と途中棄権という不本意な結果に終わっています。

しかしこの日、シフリンの滑りは他のすべての選手を圧倒していました。1本目を2位テッサ・ウォーレー(フランス)に1秒39の大差をつけるベストタイムでリードすると、2本目も2位のタイムでカバー。ウォーレーの追い上げを余裕で退けてワールドカップ通算53勝目を手にしました。今季すでに10勝目。その数にも驚かされますが、印象的だったのは何よりも、彼女の勝ちっぷりです。2本ともコース上で撮影したので、滑りはごく一部分を見ただけですが、失敗の気配を微塵も感じさせない究極の安定感を強烈に感じました。頑張るとか、必死になるという様子は皆無で、理想的なターンをひたすら正確に続けることで、他の選手との圧倒的な差を生み出したように思います。こんな印象論だけで果たして彼女の強さが伝わるか疑問ですが、技術的には素人の私としては、そうとしか表現できない圧巻のGSでした。 「1本目は、おそらくこれまでで最高の滑り。2本目はより正確に滑ってリードを守ることも考えたけれど、1本目にできなかった滑りをしようと思い、実際いくつかのターンで1本目よりも良い滑りができた。とにかく今日はパーフェクトな1日だった」とシフリン。彼女にとってこれが今季10勝目となります。同様に勝ちまくっているマルセル・ヒルシャー(オーストリア)は現時点で9勝。「最多勝争いでもヒルシャーに勝てるかもしれないね」と問われると、笑いながら「そうだったら、とても素敵だわ」と答えました。また、これで3年連続で優勝回数がふた桁に到達。1シーズンの優勝回数としては、インゲマル・ステンマルク(スウェーデン)とフレニ・シュナイダー(スイス)が打ち立てた14回という数字が最多記録です。この勢いが今後も続くとすれば、記録更新も現実的になるはず。ステンマルクは1978/79シーズンに、シュナイダーは1988/89シーズンにそれぞれ達成した記録ですが、シフリンが(あるいはヒルシャーが)2018/19シーズンにこれを破ることができるのか? シーズン後半に向けての大きな焦点となることは間違いないでしょう。


2本目はベストタイムをマークしたテッサ・ウォーレー。タイトル争いは今後さらに激化するはず

 2位となったテッサ・ウォーレーは、2本目のベストタイムを記録して意地を見せました。 「1本目はミカエラの滑りが素晴らしかったので、大きなタイム差がついてしまったけれど、2本目の滑りには満足している」とウォーレー。総合優勝争いは、シフリンが大差で2位以下を引き離していますが、GSの種目別ではシフリンの355点に対しウォーレーは345点。さらにフェデリカ・ブリニョーネも40点差で続いています。 「GSはとても混戦で、多くの選手が表彰台に上る力を持っているし、多くの選手が勝利を掴むチャンスを持っている。そんななかでレースを戦うのは、とてもエキサイティングだわ」とウォーレー。女子GSのタイトルの行方はまだまだわかりません。


1本目4位につけ2本目に順位をひとつあげたマルタ・バッシーノ。久々の表彰台復帰だ


3位は地元イタリアのマルタ・バッシーノ。次のエース候補として期待されながら昨シーズンは不調の日々を過ごしていただけに、2本目暫定トップでゴールしたときには、嬉しさを爆発させました。まだ22歳と若く、きっかけをつかめば常時表彰台争いに加わる力のある選手です。 「ようやくGSの表彰台に戻ってくることができた。しかも地元の声援の中でそれを果たせたので、言葉にならないくらい嬉しい」と興奮気味に語っていました。


安藤麻(東洋大学)

石川晴菜(木島病院)


向川桜子(秋田ゼロックス)

日本チームからは、これまで通り、安藤麻(東洋大学)、石川晴菜(木島病院)、向川桜子(秋田ゼロックス)の3人が出場しました。結果は3人とも2本目進出はならず、午前中でレースを終えました。当初は、この遠征からヨーロッパに戻ってきた荒井美桜(サンミリオン)も出場予定でしたが、トレーニング中に膝を痛めたために大事をとって休養。幸いひどい痛みではなく、次のレースに向けて調整を続けることになるそうです。


ミカエラ・シフリンとアメリカチーム

テッサ・ウォーレーとフランスチーム

マルタ・バッシーノとイタリアチーム


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